暑い夏の季節、衣類が汗でベタベタと体にまとわりついたり、蒸れてしまったり…。なにかと不快感が増える季節。
そんな時にこそ、大活躍なのが吸水速乾性の素材ではないでしょうか。
数年前から吸水速乾を謳う衣料品が徐々に販売され、今では定番的な機能として消費者に認知されていますよね。
しかし、吸水速乾がどんな仕組みでどのような加工なのかご存知の方は少ないはず。
今回は、そんな吸水速乾性素材の加工や仕組み、主な吸水速乾アイテムなどについても見ていくことにしましょう。
1 そもそも吸水速乾とは?
吸水速乾(または吸汗速乾)とは、スポーツ等でかいた汗を素早く吸収・乾燥させる性能をいいます。
運動などによる汗でベトっとした状態を防ぎ、素早く吸収・乾燥してサラッとした着心地に。
1-1 吸水速乾性が使われるアイテムはどんなものがあるの?
吸水速乾性が使用されるアイテムとして代表的なものはスポーツウェアではないでしょうか。
吸水速乾性のウェアでない場合、汗によって生地が張り付き動きの邪魔になったり、不快感によって集中力に影響を与えることも…。
運動することでたっぷり汗をかくため、スポーツウェアには吸水速乾性のある生地を選ぶことで、そういった不快感を防ぐ効果が期待できます。
その他にも、パジャマやシーツなどの寝具にも数多く吸水速乾性の加工が採用されており、快適な眠りのため、汗をすぐに拡散することでベッドや布団のムレを防ぐのに役立っています。
また、洗濯物としても乾きやすいという特徴も嬉しいポイントですよね。
1-2 吸水速乾の機能は2種類に分類されている
吸水速乾には「吸水性」と「速乾性」の2種類の機能に分かれています。
吸水性
吸水性とは、生地が水(汗)を如何に早く吸収するかという機能。
評価方法は、JIS(日本工業規格)で規定されており、生地の上から水を1滴落とし、完全に生地に吸収されるまでの時間を計測し、一般的に10秒以内であれば、吸水性があるとされています。
速乾性
水(汗)を吸った生地が如何に早く乾くかという機能。
評価方法は、ISO(国際標準化機構)で規定されており、一定量の水を吸水させて、その乾燥時間を求めます。
ISO規格での目安値は、組織や素材によっても異なりますが、約70~85分とされています。
肌に触れるような部分には汗を吸収する吸水性に優れた機能があり、肌に触れない外側の部分には汗を放散する速乾性に優れた機能がそれぞれ備わっています。
2 吸水速乾性の加工や仕組みとは?
2-1 異形断面の糸を使用で吸水性や速乾性の向上に
吸水速乾の加工をするときには、繊維の断面がY字、十字になった異形断面の糸を使用します。
それによって、毛細管現象(繊維と繊維の「すきま」のような細い空間を、重力や上下左右に関係なく液体が浸透していく現象)を引き起こしやすくなり、吸水性や速乾性を高めることが期待できます。
また、繊維の形を扁平にして、より多くの隙間を作って乾かすというものから十字型の繊維にして空気に触れる面を増やすことで速乾性を高めるものなど様々な工夫がされています。
最近では、三角型、星型、ドーナツ型等の糸もあり、汗などがより拡散し、ますまず速乾性が向上してきています。
2-2 生地の構造を工夫
吸水速乾の加工は、繊維の形を変えたり、細く、太く、あるいは空洞にするなどの加工を施すことで「吸水性」と「速乾性」の2つの機能を実現させています。
また、生地の構造を二重にし、肌側を吸水しやすい綿等のセルロース系繊維を使用、外側に合成繊維を使用することで、吸収した水分を毛細管現象で外側に移行し、表面積を増やして乾きやすくなるという仕組みに。
2-3 親水性に優れた加工剤を塗布
仕上げとして親水性に優れた加工剤を生地に塗布(後加工)することで、さらなる吸水性に優れ、吸収した水が生地表面で広がり乾燥性を向上させる効果が期待できます。
また、加工剤のコーティングによって洗濯耐久性もUP。
洗濯による性能の劣化も防ぐことができるので、より長く吸水速乾の機能を持続させることが可能に。
3 最近では、吸水速乾加工のスーツも
最近ではインナーやスポーツウェアだけでなく、スーツや制服など様々な商品にもこの「吸汗速乾」加工がされたものが出てきています。
一般的にはポリエステル糸で作られた商品が多く、吸水性・速乾性ともに◎
また、それ以外にも抗菌効果のあるものや、着用による汚れ等を家庭の洗濯機で洗い流すことができるといった商品も…。
ビジネスマンの方でも毎日綺麗な状態で仕事に打ち込むことができますよ。
まとめ
今回は吸水速乾の加工について、仕組みや主に使われるアイテム、そもそも吸水速乾とはについてまで幅広くご紹介させていただきました。
吸水速乾に大切な「吸水性・速乾性」の2種類の機能を付与するために、使用する糸や生地、加工剤といった工夫がされているということは覚えておきたいところですね!
また、その他にも生地が肌に張り付かない接地面積を少なくする研究や、さらに涼感を与える研究など…。日々加工方法の研究が進んでいるため、益々快適に過ごすことが期待できそうですね。