みなさんは「ボンディング」という生地をご存知ですか?
最近はスウェットアイテムや冬から春先のジャケットなど様々なカジュアルアイテムに「ボンディング」素材が使用されています。
「ボンディング」素材の洋服は、着るだけで主役感が出つつもコーディネートに深みが出るのが特徴です。
今回はそんな「ボンディング」の魅力から、陥りやすいトラブルまで分かりやすくご紹介します。
1 「ボンディング」とは?
1-1 異素材を貼り合わせた、多彩な可能性を持つ加工生地
2枚の異なる布を接着剤などを用いて張り合わせ、1枚の布地にしたものを「ボンディング」と呼びます。
性質の異なる織物同士や、織物とニットを接着し、一体化することもできる多彩な生地です。
「ボンディング」は素材の繊維の種類ではなく、素材の工程や状態に対する名前です。素材はそれぞれ原料や織り方、それぞれの生地の特性を組み合わせることにより、様々な性質や特徴が変わってきます。
1-2 「ボンディング」の語源とは
まず、「ボンド」は英語で「接着する(Bond)」という意味があります。
それに”ing”をつけた「ボンディング(Bonding)」がそのまま名前の語源になっているわけです。
ボンディングは、他にも「ボンディング・クロス(Bonding Cloth)」や「ボンデッド・ファブリック(Bonded Fabric)」と呼ばれることもあります。
2 「ボンディング」の方法とは?
ボンディングは、2枚の布の間に接着材を挟んで、高温・高圧でプレスする方法が一般的です。
2枚の布を貼り合わせるために使われる接着剤は、フィルム状のものやポリウレタン樹脂のものが使われることが多くなります。
そうすることによって、布地が2枚貼り合った状態でも、柔軟性が保たれる仕組みになっているわけです。
3 「ボンディング」で仕立てた生地のメリット
3-1 型崩れを防止できる
布地の裏にほかの布地や不織布、ウレタン・フォームなどを接着させることにより、コシや形態安定性をもたせ、芯地や裏地が不要になります。
例えば、ウールの張りを高めるために裏地に綿の布地を貼ることで、洋服のかたちを崩れにくくしてくれるのです。
さらにボンディングによる独特な張り感は、型崩れを防ぐだけでなくシワになりにくかったり、見た目にも上品さを感じられる生地になるのが特徴です。
3-2 張り合わせによって変わる機能性
前述した通り、ボンディングはそれぞれの生地の特性を組み合わせることにより、機能性が変化します。
例えば、コットン素材とポリウレタンラバーを張り合わせた場合を考えてみましょう。
コットン素材は肌触りがよい反面、汗や水などを吸水しやすいが耐水性に劣るという特徴があります。一方、ポリウレタンラバーは耐水性とストレッチ優れている分、汗離れが悪いという欠点も。
そこでこの2つの素材をボンディングすることで肌触り、吸水性、耐水性、ストレッチ性に優れた新しい生地が出来上がるわけです。
このように、どんな生地を貼り合わせるかによって機能性が変わるという点が、ボンディングの大きな魅力の1つと言えるでしょう。
3-3 組み合わせによって変わるデザイン性
2枚の布地を使用するという特徴をもつボンディングは、表と裏で色や柄、素材の質感を変えて、リバーシブルにすることも可能です。
このような加工を施すことを「ボンディング加工」といい、多彩な素材が作り出せる加工法として知られています。
例えば、春先に着ることの多いスプリングコート。
表地はベージュやライトブラウンなどの無地が多いですが、裏地に柄を施しているものもあって、さりげないおしゃれを楽しむことができます。
4 知っておきたい「ボンディング」のデメリット
4-1 耐久性にバラツキがある
ボンディング素材は、異素材が織り成す様々な特徴や特性が魅力ですが、一方で耐久性が一様でない点がデメリットと言えます。
どの素材をどうやって、どのくらい貼り合わせているかが、それぞれの素材や洋服によって全く違い、貼り合わせた素材によって耐久年も全く異なるのです。
そういったことから、ボンディング生地になんらかのトラブルが起きたらそれがその生地の寿命と言えるのです。
4-2 生地の剥離、ゆがみ、よじれといったトラブルも
ボンディングの洋服で一番多いトラブルとされるのが、表地と裏地がはがれてしまったり、ゆがんでしまったりするというトラブル。
原因の一つとして、接着剤の多くに使用されているポリウレタン樹脂の劣化が挙げられます。
このような劣化が発覚するのはだいたいクリーニングや洗濯後が多いようです。理由は、洋服の品質表示に「ボンディング加工」と記載されていないことによるもの。
ボンディング加工された製品と知らぬまま洗濯してしまい、洗剤による科学変化が起こり結果として劣化を引き起こしてしまうこともよくあるのだとか。
他にも強い紫外線の影響や、素材同士の伸縮率の違いなどによって生地のトラブルを引き起こすこともあるようです。
5 「ボンディング」のお手入れ方法とは?
では、少しでも長くボンディングの洋服を着るためにはどういったメンテナンスが必要なのでしょうか?
剥離やゆがみを簡単に引き起こさないためにも、下記のポイントに注意して扱うことをおすすめします。
お手入れ時のポイント
- なるべく日陰で完全に乾燥した状態で保存する。
- クリーニングに出す際は、「ボンディング」であることを申告し、タンブラー乾燥はしないこと。
- アイロンは絶対にかけないこと。
- 自宅で洗濯する場合は十分にすすぎをすること。
しかし上記を常に心がけても、いつかは経年劣化が起こる可能性はあります。
それでもお気に入りの1枚を1日でも長く着るために、上記を意識した上でしっかりとケアしてあげることをおすすめします。
まとめ
今回は、なかなか知る機会のない「ボンディング」についてご説明しました。
ボンディングは、2つの素材の特徴のいいとこ取りとも言える加工方法で、メンズ・レディース関係なく様々なカジュアルウェアやスポーツウェアに至るまで幅広い製品に使用されています。
ただしその加工の特性上、一度劣化してしまうと修復が難しいという一面も。
現在お気に入りのボンディングアイテムを持っている方や、これから購入を考えている方も、ボンディングの加工方法やメリット、デメリットを十分理解しておきましょう。