ワイシャツ、スーツ、スポーツウェア等に用いられる素材としてもお馴染みのポリエステル。
世界で最もシェア率の高い合成繊維の1つとしても知られ、普段私たちが着用しているアイテムの多くにもポリエステルが使用されています。
耐久性も高く非常に便利な素材ではありますが、適当に洗濯していると毛玉ができてしまったり、劣化スピードが早くなってしまうことも…。
そこで今回は、意外と粗雑に扱われがちなポリエステル素材の衣類について、最低限押さえておきたい洗濯のポイントや注意点を中心に詳しくご紹介いたします。
1 洗濯前に要チェック!ポリエステルの特徴
具体的な洗濯方法の前に、まずはポリエステルという素材の特徴について確認しておきましょう。簡潔に言ってしまうと、ポリエステルの特徴は、耐久性・速乾性・メンテナンス性の3つです。
1-1 他の繊維と比べて耐久性が高い
ポリエステルの特徴といえば、何と言ってもその耐久性の高さ。
他の繊維と比べて摩擦や熱にも強い上に、その強度は繊維自体が濡れてしまった時にもほとんど変わりません。
また伸縮性や形状安定性に優れているため、頻繁に洗濯してもシワになりにくく型崩れも起こしにくい繊維であるとも言われています。
ワイシャツやスーツといった清潔感が大切な製品の素材として使用されるのにも納得ですね。
1-2 速乾性が高く快適な着用感に
ポリエステルはコットンを始めとした一般的な天然繊維と比べると吸湿性が低い分、繊維が水分を吸って湿ってしまうこともあまりありません。
そのため乾きやすく、汗をかいてもサラッとした着用感をキープすることができると言われています。
スポーツウェアやインナーの素材としてポリエステルが使用されるのも、ポリエステルの持つ速乾性というメリットを活かすためです。
ちなみに冬場にポリエステル素材のインナーを着用することで、不快な汗冷えを防ぐことにも繋がります。
1-3 メンテナンス性にも優れている
ポリエステルは、一般的な天然繊維と比べるとメンテナンス性の点でも優れています。
例えば、衣類をクローゼットや箪笥に長い間しまっておく際に気になる虫食い。ポリエステル素材は石油系を原料とする化学繊維ですので、虫が寄りつきにくいというメリットがあります。
またコットンなどと比べると日光による変色もしづらいため、コットンなどと比較すると非常に扱いやすい素材と言えるでしょう。
2 ポリエステルにもデメリットはある
耐久性・速乾性・メンテナンス性に優れた素材として知られるポリエステル。しかしながら取り扱う上で、以下のようなデメリットも考慮する必要があります。
2-1 毛玉ができやすい
ポリエステルは耐久性が高く摩擦にも強いと説明しました。
しかしながら、摩擦によって毛玉ができてしまうという欠点も。特に洗濯時の摩擦によって毛玉が発生してしまうケースが多いため注意が必要です。
また天然繊維と比べ、一度毛玉ができると中々取りづらいという性質もあります。この取りづらさは、ポリエステルのメリットである繊維自体の耐久性の高さが裏目に出てしまったものなのです。
2-2 汚れを吸着しやすい
ポリエステルには、他の繊維と比べて汚れを吸着しやすいというデメリットもあります。
そのためシャツを始めとした白地のアイテムの場合、何度も着用して洗濯を繰り返していくうちに少しずつ黒ずんでいってしまうなんてことも。
また洗濯時に、汚れのひどい衣類と一緒に洗濯することで、その汚れをポリエステルが吸着する「逆汚染」と呼ばれる現象を起こすこともあるようです。
この点については洗濯方法の章にて詳しく説明いたします。
3 洗濯前に確認しておくべきこと
ポリエステルに限らず、洗濯前には必ず以下の2点をしっかりと確認しておいた方が良いでしょう。
3-1 まずは洗濯表示タグを必ずチェック
洗濯前には必ず「洗濯表示タグ」に記載されている内容をしっかりとチェックしましょう。
WEB上に掲載されている洗濯方法に関するTipsはあくまで一般論であり、その点に関しては当メディアの記事も例外ではありません。
例えば「ポリエステル素材だと思っていたアイテムに、実はコットンが混紡されていた」なんてこともよくあります。場合によっては繊細な素材が混紡されていることもあるため注意が必要です。
まずは洗濯前に表示タグを確認しておく癖をつけると良いでしょう。
3-2 色移りしないかどうかを確かめる
色付きのアイテムの場合、他のアイテムに色移りしないかどうかも併せてチェックしておいた方が無難です。
もちろん不安な場合にはそのアイテム単体で洗えば良い話なのですが、洗濯効率や経済面などを考慮するとそういうわけにも行きませんよね。
ちなみに色移りしないかどうかを自宅で簡単にチェックする方法がありますので、手順を簡単にご紹介しておきましょう。
簡単に出来る!色移りチェック法
- 目立たない場所に液体タイプの洗濯洗剤を付ける
- 洗剤を塗布したあとはそのまま約5分間待つ
- 白い布地やティッシュを当てて色が付いていないかどうかチェックする(※もし色が付いていたら手洗い、もしくは単品洗いを検討しましょう。)
4 【洗濯機編】ポリエステル素材の洗い方
用意しておくものリスト
洗濯前に、まずは以下の4つのアイテムを用意しておきましょう。
ちなみに柔軟剤に関しては任意ですが、一緒にいれることでポリエステル特有の静電気を防止する効果も期待できます。冬場の衣服などには最適ですね。
用意しておくものリスト
- 洗濯用ネット
- 洗濯洗剤(可能であれば弱アルカリ性)
- 酸素系漂白剤(黒ずみなどが気になる場合)
- 柔軟剤(任意)
STEP1 汚れのひどい衣類は予め取り出しておく
ポリエステルを洗濯機で洗う場合は、あらかじめ汚れのひどい衣類を取り出して分けておきましょう。
先ほども触れた通り、ポリエステルは汚れを吸着しやすい性質を持っています。そのため汚れのひどい衣類と一緒に洗濯することで、その汚れを吸着してしまう可能性があるのです。
この現象を逆汚染や再汚染と呼ぶこともあります。
極端に黄ばみや黒ずみのひどい衣類は別個で手洗いするなどして対応しましょう。
STEP2 衣類を洗濯ネットに入れる
次に、ポリエステル素材の衣類を洗濯ネットに入れます。
ポリエステルは耐久性には優れていますが、摩擦に弱いという点が欠点の1つです。そのまま他の衣類と一緒に洗いにかけてしまうと、摩擦によって毛玉が発生してしまうこともあります。
素材へのダメージを最小限に抑えるためにも、洗濯の際は出来るだけネットを使うようにしましょう。
STEP3 水量を多め・脱水時間は短めに設定して回す
ポリエステル素材の衣類を洗濯する際には、まずは水量を多めに設定して回すのがポイント。これは逆汚染(再汚染)を防止する上でも有効な方法の1つであると言われています。
また出来るだけ脱水時間も短めに設定しておきましょう。
ポリエステル素材はシワになりにくいというメリットがあるものの、あまり長い時間脱水にかけると取りにくい「絞りシワ」が残ってしまう可能性もあるからです。
STEP4 粗シワを伸ばして陰干しで乾かす
脱水が完了したら、陰干しでしっかりと乾かしましょう。
干す前に衣類をパンパンと叩きながら軽くシワを伸ばしておくのもポイント。こうすることで、自然乾燥後の仕上がりも綺麗になります。
ポリエステルは形状安定性にも優れているため、軽く粗シワを伸ばしておくだけでも十分です。ちょっと面倒なアイロン掛けの手間も省くことができることでしょう。
5 【手洗い編】ポリエステル素材の洗い方
お手入れしやすい素材としても知られるポリエステルですが、薄手のデリケートな質感の生地の場合は手洗いの方が適している場合もあります。
洗濯表示タグを確認し手洗い推奨のマークが記載されていた場合には、その指示通りに手洗いにて洗濯を行うようにしましょう。
用意しておくものリスト
手洗いの前に、まずは以下の3つのアイテムを用意しておきましょう。
用意しておくものリスト
- 衣類が浸かる大きさの洗面器
- おしゃれ着用洗濯洗剤
- 仕上げの柔軟剤(任意)
STEP1 洗面器にぬるま湯を張り、洗剤を入れる
まずは洗面器にぬるま湯を張って、おしゃれ着用の洗濯洗剤を入れます。
ぬるま湯の温度は、だいたい30℃前後がベストです。
ただし家庭用給湯器の場合、30℃という微妙な温度の設定はできない場合が多いため、一度熱めのお湯を入れた後に冷水で調整すると良いでしょう。
STEP2 衣類を入れて丁寧に押し洗いする
次にポリエステル素材の衣類を一度綺麗にたたみ、洗面器の中に入れます。
両手で押したり離したりしながら優しく「押し洗い」するのがポイント。押し洗いは、生地に摩擦をほとんど与えないため、毛玉のできやすいポリエステルにもうってつけです。
くれぐれも生地をゴシゴシと擦ったりしないように注意しましょう。
STEP3 洗剤が落ちるまでしっかりとすすぐ
洗面器のお湯を一度流して新しく水を入れたら、洗剤が落ちるまでしっかりとすすいでいきます。
もし柔軟剤をいれるのであれば、このタイミングで投入すると良いでしょう。
すすぐときも出来るだけ生地を擦ったりせず、洗面器の中で泳がせるようにするのがポイントです。これを数回繰り返していきます。
STEP4 軽く絞って水気を切ったら陰干しで乾かす
すすぎが終わったら水気を取るために軽く絞り、陰干しで乾かします。
乾燥機ではなく必ず自然乾燥で乾かすようにしましょう。
前述した通り、干す前に衣類をパンパンと叩きながら軽くシワを伸ばしておくことで、自然乾燥後も綺麗に仕上がります。
6 ポリエステルのお手入れに関するよくある疑問
6-1 乾燥機を使って乾かしても平気?
ポリエステル素材の衣類の場合、乾燥機を使って乾かすのは原則としてNGです。
確かにポリエステルは、化学繊維の中では比較的耐熱性には優れているとされています。しかしながら、乾燥機のように長時間高温にさらし続けることで繊維が縮んでしまうことも。
他の衣類と一緒に乾燥機に入れてしまいたくなる気持ちもわかりますが、出来るだけ風通しの良い場所で自然乾燥させるようにしましょう。
ポリエステル100%だけでなく混紡の製品も同様に注意が必要です。
6-2 アイロン掛けはしても良い?
アイロン掛けは基本的に問題ありません。
ただしポリエステルは高熱に弱いため、当て布をした方無難です。ちなみに当て布とは、アイロンが衣類に直接触れないようにするために乗せる布地のことです。
これを行うことで、アイロンの熱を分散させ生地へのダメージを軽減することができます。
当て布が推奨されている製品には、洗濯表示タグのアイロンマークの下に「〜」という波線が引かれています。アイロン掛けの前には念のためチェックしておいた方が良いでしょう。
まとめ
今回は、ポリエステル素材を使った衣類の洗濯方法を中心に解説いたしました。
一般的には、コットンやシルクを始めとした天然繊維のお手入れ方法ばかりにスポットが当てられがちです。
確かにポリエステル等の化学繊維は天然繊維と比べて耐久性の点で優れていることも多いですが、粗雑に扱っていると繊維の劣化が早まってしまうこともあります。
もし今後お手持ちのポリエステル製品を洗濯する際には、本日ご紹介したポイントや注意点を意識してみると良いでしょう。
たとえ化学繊維であっても、丁寧に扱ってあげることで物持ちを良くすることにも繋がります。