デニム生地に自然なシワと着古したような独特の風合いをもたらす「ウォッシュ加工」。
流通しているほとんどのデニム製品にはこのウォッシュ加工が施されています。
そんなウォッシュ加工にも多くの加工方法と特徴があるのをご存知でしょうか?
今回はそんなウォッシュ加工について、その歴史や必要性、種類、特徴に至るまで詳しくみていきましょう。
1 ウォッシュ加工ってなに?
ウォッシュ加工は別名シワ加工とも呼ばれ、製品をウォッシャーとよばれる自動洗浄機に入れて、熱処理を行う加工方法のことです。
製品の自然な色落ちやシワをつけたりして生地を柔らかくするという目的があります。
自然な小ジワや着古したような独特の風合いを表現することができるため、デニム製品のほとんどにこのウォッシュ加工が用いられています。
1-1 ウォッシュ加工の歴史
ウォッシュ加工の始まりは、あのジーンズで有名なブランド「EDWIN」が開発したもの。
EDWINは「新品でも穿きやすいジーンズをファッションとして定着させたい」をコンセプトに様々な試みが行われ、1963年に初めてウォッシュ加工(ワンウォッシュ加工)の開発に成功したとされています。
その後、徐々に様々な技術を駆使したウォッシュ加工が開発されていきました。
1-2 なぜウォッシュ加工が必要なの?
ウォッシュ加工はなぜ必要なのでしょうか?
実は、縫製されたばかりのデニム生地(生デニム)は何も加工が施されていないため、生地の表面に糊が付いていてとても固くなっています。
この生デニムの状態で洗ってしまうと、ひどい色落ちや縮みを引き起こしてしまう原因にもなりかねません…。
流通させる前に、あらかじめ履きやすくしておくためにもこのウォッシュ加工を施しておく必要があるのです。
2 さまざまなウォッシュ加工の種類
2-1 ワンウォッシュ加工
ワンウォッシュ加工は、いわゆる水洗いによる加工方法のこと。
生デニムの硬さをとることと、家庭で洗濯するときの色落ちなどを防ぐことが期待できます。
また、水洗い後にタンブラーをかける事で、洗濯しても縮みにくい製品に。
ウォッシュ加工の中では最も簡単な加工方法の1つとされており、比較的濃色のインディゴデニム生地には、このワンウォッシュ加工が用いられていることが多いようです。
2-2 ストーンウォッシュ加工
ストーンウォッシュ加工とは名前の通り、石を使用して洗う加工方法です。
洗い加工時に研磨物質も一緒にいれることで、生地への程よいダメージ付けと比較的強めの色落ち効果が期待できます。
研磨物質には、軽石、セラミック(人口石)、角ゴム、ウォッシュボールなどが用いられることが一般的ですが、場合によってはゴルフボールが使われることもあるようです。
デニムをどんな表情に仕上げたいのか。それによって使用するものが大きく異なる手法といえます。
2-3 ケミカルウォッシュ加工(ケミカルブリーチ)
ケミカルウォッシュ加工とは、ストーンウォッシュと併用し、強力な漂白剤(次亜塩素酸ソーダ)に漬けた軽石とデニム製品を一緒に洗う加工方法のことです。
石と生地がぶつかることによって擦れたり、脱色し、白が際立った独特な色落ちとデザイン的なムラを表現してくれます。
2-4 バイオウォッシュ加工
バイオウォッシュ加工とは、特にデニムなどの綿素材によく用いらる方法で、“セルラーゼ”という酵素を使って洗う加工方法になります。
セルラーゼは繊維を溶かすという作用があるため、適度に洗いに掛けることで繊維を細く痩せさせて、柔らかくするという効果が期待できます。
また、洗う時には強く回転させて洗うため、かなり色落ち感がでるのもバイオウォッシュの特徴の1つ。
さらに、ストーンウォッシュなどと併用すれば、より柔らかな肌触りと自然な風合いになります。古着感を演出する場合には、この加工方法が使われることが多いようです。
3 あえて色落ちを楽しみたいなら生デニム製品を
ウォッシュ加工を施したアイテムも素敵ですが、あえて何も加工が施されていない生デニムの製品で色落ちを楽しむのも良いもの。
生デニムは防縮加工が施されておらず、糊がついている状態なため、パリっと硬い生地感が特徴です。
何の加工も施されていない糊付きの状態から履き込むことで、自分らしいエイジングを楽しむことができます。自分らしく育てたいという方にはウォッシュよりも生デニムの方がおすすめです。
ただし、生デニムには縮みやすいという性質があるためサイズ感には注意した方が良いでしょう。不安な方は、普段よりもワンサイズ上の物を選ぶのが無難かもしれませんね。
4 ウォッシュ加工が施された製品
ウォッシュ加工が施される製品は一般的にデニム生地のアイテムと思われがちです。
しかし実際はデニムだけではなく、レザージャケット、シャツ、ニットウェアなど、様々なアイテムにウォッシュ加工が施されています。
4-1 天然皮革などを使ったライダースやレザージャケット
天然皮革などを使ったライダースやレザージャケットもこのウォッシュ加工が施されることがあります。
ウォッシュ加工を行うことで、新品の状態でも羽織りやすく、まるで何年か使い込まれたかのような自然な風合いとこなれ感を演出することも可能です。
ちなみにレザー素材のトートバッグなどにも、このウォッシュ加工が施されていることもあります。
4-2 コットンやリネン生地を使ったシャツやワンピース
コットンやリネン生地といった洗うと縮みやすい素材の製品には、ウォッシュ加工が有効です。
メンズのシャツやレディースのワンピースやワイドパンツなど…。ウォッシュ加工を施すことで、家庭で洗ったらサイズがキュッと縮んでしまうなんてことを防ぐことができます。
さらに、製品自体が柔らかくなるため、着用やすくなるという点もメリットの1つです。
4-3 ニットウェアに使われることも
ニット帽やパーカー、トレーナーやスウェットなどのニットウェアにもこのウォッシュ加工が施されることがあります。
ウォッシュ加工を行うことで、一般的なニットウェアにはない独特の風合いに。
またあらかじめウォッシュ加工を施しておくことで、ニット特有の洗ったら縮みやすいというデメリットもカバーすることができます。
まとめ
今回はウォッシュ加工に関する歴史、必要性、種類、特徴などを中心にご紹介いたしました。
他にもバイオウォッシュとストーンウォッシュを組み合わせたバイオストーン、オーバーダイなどウォッシュ加工の種類は多岐にわたっています。
また、一般的には「ウォッシュ加工 = デニム」という印象が強いかもしれませんが、実際はシャツやレザージャケットなど様々なアイテムの加工に使用されているのです。
身近なアイテムにどんなウォッシュ加工が施されているのかチェックしてみても面白いかもしれませんね。