日常的に着用するファッションアイテムの生地として頻繁に目にする「ツイル」。
皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
ツイル生地とは、織り目が斜めになっている厚めの「綾織物」のことです。パンツやジャケットなどの衣料品に良く使われる生地として有名ですよね。
しかしながら、ツイル生地って具体的にどんな生地なのか、なぜ多くの衣料品に使われているのか知らない方も多いはず。
そこで本記事では、ツイル生地・綾織の概要から生地の素材、特徴、注意点まで詳しくご紹介します。
1 そもそもツイル生地とは?
1-1 概要
「ツイル生地」とは、厚めで織り目が斜めになっている「綾織物」のことです。
肌触りの良さ、適度な光沢感、伸縮性を持ったシワになりにくい生地として知られています。
太めの糸を使い、丈夫なことで知られる「デニム生地」や、高密度の綾織によって撥水性を持たせた「ギャバジン」などもツイル生地の一種です。
ツイル生地は、素材や織り方・加工方法に変化を加えることで幅広い用途に利用可能な、汎用性の高い生地と言えるでしょう。
デニム生地やギャバジンについて、詳しくは下記の記事を参考にしてみて下さい。
1-2 綾織って何?
綾織とは、織物の中でも最も基本的な三種類「三原組織」のうちの一つ。
織物の三原組織は、「平織り」、「斜文織り」、「朱子織り」の三つから構成されます。この三つのうちの一つ、斜文織りが綾織のことです。
つまり、斜文織=綾織=ツイルの三つは、同じ織物のことを指しています。
織物についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみて下さい。
2 ツイル生地に使われる素材
コットンは、ツイル生地の代表的な素材として知られています。
コットンを使ったツイル生地は、柔らかく、シワになりにくいのが特徴で、チノパンやジャケットに頻繁に使われている素材として有名です。「綿ツイル」や「コットンツイル」と呼ばれることもあります。
ウールを混紡したツイル生地のトラウザーなども人気が高いアイテムの一つ。
その他にも、ポリエステルやナイロンなどの化学繊維を混紡したツイル生地も定番です。
ツイル生地には、様々な素材を使ったものが存在し、チノパンやデニムパンツからフォーマルなシーンでのビジネススーツまでカテゴリーを問わず様々なアイテムで使用されています。
3 ツイル生地の特徴
3-1 柔らかな肌触り
ツイル生地の最大の特徴は、その柔らかな肌触り。平織りと比較すると、強度では劣るツイル生地。一方、肌触り・柔らかさではツイル生地が勝ります。
また、太い糸を使用しても柔らかさや質感が損なわれないこともツイル生地が持つ特徴の一つ。
生地に使用する糸を太くすることで、質感を損なわずに高い耐久性を持たせることが可能なのです。
丈夫さと着心地が重要とされるジャケットやパンツには非常に適した生地と言えるでしょう。
3-2 光沢感
上品な光沢があるのもツイル生地が持つ特徴です。
ツイル生地は、縦糸が2〜3本の横糸の上を通った後、横糸1本の下を通すことを繰り返す織り方をしています。そのため目に見える交差点が少なく、表面の面積は縦糸の割合が多いので、絶妙な光沢が生まれるのです。
この適度な光沢感によって、ビジネススーツを始めとしたフォーマルなアイテムにも相応しい上品な雰囲気を演出できます。
3-3 シワになりにくい
ツイル生地は、シワになりにくいのも特徴の一つ。
さらに適度なハリを持っているため、型崩れを起こしにくく、バッグや、キャップなどのアイテムにも使用されます。
シワや形崩れが気になってしまうコートにはうってつけの生地と言えるでしょう。
また、ポリエステルを混紡しているツイル生地は、より形態安定性が高いのが特徴です。
3-4 優れた伸縮性
ツイル生地は、肌触りが良く、ハリがあるのに加え、伸縮性に優れている点も特徴です。
ほとんど伸縮性のない平織りのアイテムと比較すると、ツイル生地が使われたアイテムは伸縮性が高く、着心地が良いことで知られています。
そのため、平織り生地が使われた衣料品のほとんどは、太めで無骨なシルエットのものが多いのに対し、ツイル生地の衣料品は、太めからスリムフィットのものまで様々なシルエットが存在することも特徴の一つ。
このように、ツイル生地は、実用性・汎用性が高い生地なのです。
4 ツイル生地の注意点
基本的に丈夫でデメリットの少ないツイル生地。ただし、使用する際に注意しなくてはならないのが摩擦です。
ツイル生地の表面には、「斜文線(綾目)」と呼ばれる、斜めの線上に浮き上がる線があります。これは、綾織りをする際に糸同士が交差する点が斜めになる性質から出るパターンです。
そのため、強く摩擦したり、同じ場所に何度も摩擦が加わった場合には、凸になっている斜文線が削られて生地が薄くなってしまいます。ツイル生地の質感を損ねないためにも、可能な限り摩擦を避けることが大切です。
ただし、ツイル生地を使ったアイテムの中には、デニム生地のように摩擦による経年変化が「味」として捉えられている場合もあります。
摩擦に弱いというツイル生地の弱点は、一部のアイテムにとってはむしろメリットだと言えるでしょう。
まとめ
今回は、織物の中でも最も基本的な三種類「三原組織」のうちの一つ「ツイル」についてご紹介しました。
ツイル生地は、厚めで織り目が斜めになっている「綾織物」のこと。
柔らかな肌触りや上品な光沢、伸縮性、シワになりにくいなどの優れた特徴を持っています。
また、ツイル生地に使用する素材や織り方・加工方法を工夫することで、デニム生地やギャバジンのように異なる性質を持たせることも可能です。
そのため汎用性は高く、カジュアルなジャケットやパンツを始めとして、キャップやバッグなどの小物からビジネススーツなどのフォーマルなアイテムまで幅広く使われています。
本記事を通してツイル生地のメリット、デメリットを知ることで、身近なツイル生地をより楽しんでいただけたら幸いです。