柄の王道「タータンチェック」は実は奥が深い!その歴史や種類を知る

あらゆる柄の中でも特に有名な「タータンチェック」柄。

特に秋冬はマフラーは始めとしたアイテムでも定番柄として親しまれていますよね。皆さんも1点くらいはタータンチェック柄のアイテムをお持ちでありませんか?

しかしながら、あまりに定番であるがゆえに、その歴史や豊富な柄の種類など意外と知られていないことも多い様子。

今回は、そんなタータンチェック柄のもつ歴史的背景や用途や目的によって変わる柄の種類などにスポットを当てて、その魅力について詳しくご紹介します。

身近な柄のちょっとニッチな豆知識として、ぜひ覚えておいてくださいね。

1 タータンチェックとは何か?

タータンチェック柄

そもそも具体的に何を持って「タータンチェック」としているのでしょうか?まずはその概要や定義など、基本的な知識について詳しくみて行きましょう。

1-1 イギリスを代表する格子柄の織物

タータンチェック柄とは、ウールの多色糸を綾織にした格子柄の織物のことを指します。

日本国内ではタータンチェック柄と呼びますが、諸外国では「タータン(tartan)」や「プラッド(plaid)」という名称で呼ばれることもあります。

特にイギリス・スコットランドの文化と密接な関係があり、中でもハイランド地方では民族衣装を仕立てる際の生地として用いられてきたほど。

シンプルなルックスながら、実はとても伝統的な柄の1つなのです。

1-2 柄はスコットランドのタータン登記所で一元管理

どんなチェック柄でもタータンを名乗ることができるわけではありません。

実は、タータンという名称を用いるためには、スコットランドにあるタータン登記所(The Scottish Register of Tartans)と呼ばれる場所で申請し登録をしなくてはならないのです。

一般的な柄と区別しその独自性と伝統を守るために、このような制度を採用しています。

申請自体は誰でも可能ですが、厳格な審査を通過しない限り「タータン」の名称を標榜することはできないのです。

これが他のチェック柄との最も大きな違いの1つと言えるでしょう。

2 タータンチェックの歴史

タータンチェックはとても古く、古代から存在するという説もあるほど。

現在は、16世紀頃のスコットランド・ハイランド地方の民族衣装をタータンチェックの起源とする考え方が有力です。

またタータンを語る上で、政府軍(グレートブリテン王国、のちのイギリス)と反政府派(ジャコバイト軍)の闘争の歴史に関する話題は避けて通れません。

ここで少し、歴史のお話をしておきましょう。

2-1 カロデン・ムアの戦いとタータン禁止令

タータンチェックに関連して覚えておきたいのは、両軍が大規模な闘争を繰り広げた「カロデン・ムアの戦い(カロデンの戦い)」です。

質・量共に圧倒的な力を誇っていた政府軍は、この戦いで反政府軍に勝利します。

敗戦した反政府軍の7割はハイランド人であったため、政府軍は鎮圧後、野蛮なハイランド人が使っていたタータンの着用を禁止する法律を発効しました。

この法律によって「タータン = 隷属民の衣服」という認識が広まり、隷属民用に大量生産されます。

これが皮肉にもタータンを世界に発信していくキッカケとなったのです。

2-2 ロマン主義派によるタータンの再興

タータン禁止令は1782年に撤廃されたものの、その頃には既にハイランドにおけるタータンチェックの文化はボロボロに廃れてしまっていました。

そんなタータンの文化を救ったのが、ロマン主義派でした。

彼らは廃れかけていたハイランドの文化を取り上げて「高貴な未開人」として世に広め、ハイランドブームを引き起こします。

2-3 エディンバラの式典でのタータン着用義務付け

タータンのもつ野蛮なイメージはハイランドブームによって徐々に払拭され、ついに復活の契機となる大きな出来事が起こります。

それは、イギリス・ハノーヴァー朝の国王ジョージ4世のエディンバラ訪問式典。この式典に参加するにあたり、なんとタータンの着用が義務付けられることとなったのです。

こうしてタータンはようやく復活を遂げることができました。

現在では様々な種類のタータンが登場し、トラディショナルな柄の1つとして世界中の人々から愛されています。

3 タータンチェックの4つの色合い

タータンチェックには、モダン(Modern)、オールド(Old)、ウェザード(Weathered)、リプロダクション(Reproduction)と呼ばれる4つの色合いがあります。

3-1 モダン(Modern)

モダン(Modern)とは、化学染料を使用した鮮烈で濃いめの色合いのタータンのこと。

ロイヤル・スチュワートのようなタータンが代表的です。

4つの色合いがハッキリ分かれているため、上品さの中にもキリッと引き締まった雰囲気があります。ただし、混色ならではの美しさが損なわれるという評価もあるようです。

3-2 オールド(Old)

オールド(Old)は、別名アンシェントとも呼ばれ、優しい色合いのタータンを指します。

前述したモダンよりも全体的に柔らかい雰囲気が特徴的です。

ちなみにモダンが化学染料で染めているのに対して、オールドは自然由来の染料を使って染めるのが一般的。この自然由来の染料が優しい色合いを作り出しています。

3-3 ウェザード(Weathered)

ウェザード(Weathered)は、前述したオールドをより一層ぼやかした独特の色合いのタータンのこと。「ミューテッド(Muted)」と呼ばれることもあります。

まるで長い間日に当てたかのようなエイジング感が特徴的です。

モダンやオールドよりもどこか落ち着いた印象を醸し出すことができます。

3-4 リプロダクション(Reproduction)

リプロダクション(Reproduction)は、年月の経った古いタータンを再現した色合いのこと。

ジャコバイト軍と政府軍が激しい戦いを繰り広げたことでも知られるカロデン・ムーアで発見された古いタータンに着想を得て作られたと言われています。

タータンの製造業者である「D.C. Dalgliesh 」の登録商標としても有名です。

4 目的や用途によって変わるタータン

タータンは、その目的や用途によって色合いや柄が変わります。

4-1 ディストリクト・タータン

ディストリクト・タータン(district tartan)とは、その地域の文化に関連したタータンのこと。基本的には、タータンの前に地名が冠されていることが多いようです。

ただし、地域の文化に根ざしていないタータンであっても、地名さえ付けられていればディストリクト・タータンに分類されます。

ちなみに本場のイギリスだけでなく、アメリカやカナダなどにも公式のディストリクト・タータンが存在します。

4-2 クラン・タータン

クラン・タータン(clan tartan)は、クランと呼ばれるスコットランドの由緒ある氏族が着用する格式高いタータンのこと。

「姓」ごとに柄や色合いが異なることから、日本における家紋のような位置付けであると言われることもよくあります。

ただし、必ずしも1つの姓に対して柄は1つとは限らず、複数の柄のタータンを有することもあるようです。

4-3 ドレス・タータン

ドレス・タータン(dress tartan)とは、その名の通り正装の1つとして着用されるタータンのこと。

基本的には赤や青といった色合いのタータンが多い中、ドレス・タータンは白やクリーム色を基調としている点が大きな特徴です。

当初は晩餐会の正装として着用されていましたが、現在はスコットランドの伝統的なハイランドダンスを踊る際の正装として親しまれています。

4-4 ミリタリー・タータン

ミリタリー・タータン(military tartan)とは、その名の通り軍隊で使用されるタータンのことです。アーミー・タータン(army tartan)と呼ばれることもあります。

中でも特に有名なのは、緑、青、黒を基調としたブラックウォッチです。

街の警備(watch)を行うスコットランドの軍隊がこのタータンを着用していたことから、ブラックウォッチと呼ばれるようになったのだそう。

4-5 ハンティング・タータン

ハンティング・タータン(hunting tartan)とは、狩猟に適した色合いのタータンのことです。

基本的には、茶色、黒色、緑色を始めとした他のタータンと比べるとかなり暗めでシックな印象のものが多いのが特徴。

ハンティング・タータンという名称こそ付いているものの、実際に狩猟に使われることはほとんど無かったと言われています。

4-6 メモリアル・タータン

メモリアル・タータンとは、「Memorial(式典)」のために特別にデザインされたタータンのこと。

中でも有名なのは、かのダイアナ妃をイメージして作られたダイアナ・プリンス・オブ・ウェールズ・メモリアル。白を基調とした気高く上品なチェック柄です。

このように王室の方々の記念日や追悼といった際に、このメモリアル・タータンが作られるケースが多く見受けられます。

4-7 コーポレート・タータン

コーポレート・タータンとは、企業がブランディング目的でデザインするタータンのこと。中でも最も有名なのは、イギリス発高級ファッションブランドのバーバリー。

ベージュカラーを基調にした独特のチェック柄は世界的にも高く評価されています。

ちなみに日本国内では、百貨店としてお馴染みの伊勢丹がオリジナルのタータンである「マクミラン・イセタン」が正式に登録されています。

5 タータンの位置付けは国や地域によって異なる

5-1 着用資格があるという厳格な考え方

クラン・タータンのように、氏族のような特定のコミュニティの間で着用されるようなタータンには着用資格があるとする考え方もあります。

例えば、「タータンを選ぶ際には、まず自分自身の”姓”に関係する物を選ぶべきである」といったガイドラインも存在するのだとか。

もちろんこれはあくまで法律ではなく「慣習」の1つ。

クラン以外の人間がクラン・タータンを着用したからと言って罰せられるわけではありません。

5-2 誰が着ても良い「ユニバーサル・タータン」

クランタータンのような厳格な慣習がある一方で、「ユニバーサル・タータン(フリー・タータン)」と呼ばれる考え方もあります。

ユニバーサル・タータンの場合、誰が着ても問題ありません。

例えばハンティング・スチュアートやブラックウォッチと呼ばれるタータンは、ユニバーサル・タータンに分類されています。

もちろんいずれの考え方を採るにせよ、長きにわたって育まれてきた伝統的なタータン文化の品位を損ねることがないように着用するのが最低限のマナーです。

まとめ

今回は、意外と奥の深いタータンチェック柄についてご紹介しました。

ひと口にタータンと言っても目的や用途に応じて、ディストリクト、クラン、ドレス、ミリタリー、コーポレートといった沢山の種類が存在しています。

しかもこの柄は全てスコットランドの登記所にて一元管理されているというのは驚きですよね。勝手にチェック柄を作っただけではタータンを名乗ることはできないのです。

それほど伝統的で格式高い柄であることがお分りいただけたかと思います。

日本人にとっても身近な柄の1つですので、ぜひ今度お店で見かけた際には、ぜひ今回ご紹介した内容を思い出してみてくださいね。