お気に入りのスニーカーの靴底がボロボロに劣化してしまっていた…なんて経験はありませんか?
実はこれ、「加水分解」と呼ばれる現象が劣化原因の1つとして挙げられます。
たとえ部屋に飾っておくためのディスプレイ用のスニーカーであっても、この現象によってどんどん劣化してしまう可能性もあるのです…。
今回は、大切なスニーカーを劣化させる「加水分解」という現象の原因とメカニズムを中心に、加水分解を防ぐために知っておきたい対策に至るまで詳しくご紹介いたします。
1 そもそも加水分解とは?
加水分解とは、「水が作用して起こる分解反応」の総称です。
ちょっと難しい表現ですよね…。もっと簡単に言ってしまうと、スニーカーにおける加水分解とは、「靴のソールに使用されている素材が、空気中の水分(湿気)と結びついてバラバラになってしまうこと」を言います。
例えば靴のソール部分に使用されている「ポリウレタン」や「ウレタンゴム」と呼ばれる樹脂は、加水分解を起こしやすい代表的な素材の1つ。
これらの素材が空気中の湿気などの影響を受け、時間をかけて徐々に劣化してしまうわけです。
劣化スピードは持ち主の保管方法や着用頻度によって異なりますが、だいたい購入してから早くて3年程度で加水分解が進行していくと言われています。
2 加水分解を起こしやすいスニーカーのパーツ
2-1 ソール
数ある素材の中でも、とりわけ「ウレタン樹脂」を含むソールは加水分解を起こしやすいと言われています。
先ほども触れた通り、スニーカーのソールにはポリウレタンやウレタンゴムを始めとした「ウレタン樹脂」を原材料とする素材が多く使用されています。そのため加水分解を引き起こしやすいわけです。
中でもアウトソール(地面に触れる部分のソール)は、内側のミッドソールよりも加水分解のスピードが早くなる傾向にあると言われています。
2-2 アッパー
「加水分解 = ソール部分の劣化」と考えられてしまいがちですが、実は靴の上部を覆うアッパー部分もまた、素材によっては加水分解を引き起こす可能性のあるパーツの1つです。
エナメルや合成皮革(シンセティックレザー)にはウレタン樹脂が使用されている場合は、注意した方が良いでしょう。
アッパーが劣化して履けなくなることはありませんが、見栄えがかなり悪くなってしまいます。
3 日本の気候はスニーカーの加水分解を起こしやすい
日本は他の諸外国と比べても、空気中の湿気が多い国であると言われています。
先ほども説明した通り、加水分解とはスニーカーに使用されている素材と空気中の水分が結びつくことで起こる劣化現象です。空気中の湿度が多ければ多いほど、分解が起こりやすくなってしまいます。
例えばアメリカで購入した中古のスニーカーを日本に持ち込むと、急激に劣化が進み、そんなに履かないうちに壊れてしまうという話もよくありますよね。
特に梅雨頃から真夏にかけては温度も湿度も高く、スニーカーにとっては地獄のような環境です。
多湿な日本の気候は、スニーカーの保管するにはあまり適していないと言えるでしょう。
4 加水分解したスニーカーを使い続けるとどうなるの?
ソール部分の加水分解が進行している場合には、本来ソールの持っているはずのクッションが十分に機能しなくなります。
クッションが機能しなくなるということは、踏みしめた時に伝わる地面からの衝撃が直接足に伝わってしまいますよね。もしそのまま履き続ければ、膝を痛めてしまったりする可能性も考えられます。
まためくれ上がったソールに引っかかって転んでしまう危険性もあります。
いずれにせよ、もしソールにヒビが入ってしまっていたり部分的にでも剥がれてしまった場合には、そのまま着用して外出するのは避けた方が良いでしょう。
5 大切なスニーカーを加水分解から守るための4つの方法
スニーカーの加水分解を”完全に防ぐ”方法は残念ながら今のところありません。
たとえ一回も履かずに靴箱に保管していたとしても、湿度は空気中に一定の割合で常に存在しています。未開封のまま部屋の隅に置いておくだけでも、加水分解は徐々に進行していくものなのです。
ただし、加水分解による劣化の進行を”遅らせる”方法ならいくつか存在します。
5-1 濡れてしまった後はしっかりと乾かす
雨の日にスニーカーを履いて出かけたらびしょ濡れになってしまった…なんてことはよく起こりますよね。
ここでびしょ濡れのまま放置するのはNG!何度も説明している通り、水分と湿気はウレタン樹脂を使用しているスニーカーの大敵です。
新聞紙やキッチンタオル等を使って水滴をしっかりと拭き取った後は、風通しの良い場所でしっかりと乾かしましょう。
特に雨天の続く梅雨の時期などは、できるだけこまめに乾かしてあげるようにしてくださいね!
5-2 できるだけ風通しの良い場所で保管する
びしょ濡れになっていなかったとしても、スニーカーは普段からできるだけ風通しの良い場所で保管することをおすすめいたします。
開閉扉の付いたシュークローゼットの中にしまいこんでしまう方もいらっしゃりますが、スニーカーのことを考えるのであれば、開放型の棚などに収納した方が良いでしょう。
風通しも良い上に、シュークローゼットのように中で湿気がこもることもありません。
開放型の棚があまり好きでない方は、定期的にシュークローゼットの扉を開け放って換気をしたり、棚板をスノコに変えるだけでもシュークローゼット内の湿気対策になります。
5-3 ジップロック + シリカゲルで湿気を取る
スニーカーフリークたちの間でも定番的な手法として親しまれているのが、 ジップロックとシリカゲルを使った保管方法です。
以下の手順に従って、実際に試してみましょう。
- シリカゲル(吸湿剤)とスニーカーが入るサイズの大きめのジップロックを用意する
- スニーカーをジップロックに入れる
- スニーカーを入れたジップロックの中に、シリカゲルを3袋ほど入れる
- 空気を押しだすようにしながらしっかりとジップを留めて密封する
無駄にスニーカーを外気に触れさせることもない上に、シリカゲルがジップロック内の湿気を吸ってくれます。こうすることで、加水分解の進行を遅らせることができるわけです。
しばらく履いていないスニーカーがある時は、ジップロック + シリカゲルを使った方法で保管しておくことをおすすめいたします。
5-4 複数のスニーカーをローテーションしながら履く
できるだけ複数のスニーカーをローテーションしながら履くことをおすすめいたします。
毎回同じスニーカーを履き雨風に打たれていれば、当然ながらそのスニーカーのみ劣化のスピードが早まるのは必然です。
長持ちさせることを考えるのであれば、今持っているスニーカーを満遍なく履くことを意識しましょう。
ちなみに未使用品であってもウレタン樹脂は製造された時点から劣化が始まっていますので、履かなかったからといって加水分解が止まるわけではありません。
スニーカーの加水分解は遅かれ早かれ訪れるものです。できる限り長く使うにはどうしたら良いか?といった視点で、日頃から保管方法やシューケアに気を使うことが大切になってきます。
6 使い古したらリペアサービスの利用も検討しよう
どんなに頑丈に作られたスニーカーであっても、人が作ったものである以上、いつかは壊れてしまうものです。
加水分解でソールが壊れてしまいもう履けないけれど、デザインもすごく気に入っているしまだ捨てたくない…。そんな時は、靴修理屋さんのリペアサービスの利用を検討してみましょう。
加水分解でボロボロになってしまった無残なソールを新しいものに張り替えて貰える(リソール)可能性もあります。
ただし、既にデットストック(廃盤)になっているものの場合は難しいかもしれません。
一般的なシューズストアで流通しているスニーカーであれば、問題なく対応して貰えるケースが多いようです。まずは「最寄りの駅名 + 靴修理」といったキーワードで検索してみると良いでしょう。
まとめ
今回は、加水分解を起こすメカニズムとスニーカーの保管方法についてご紹介しました。
加水分解を完全に防ぐことは難しいですが、日頃のお手入れや保管方法次第で劣化のスピードを遅らせることができるかもしれません。
特にジップロックやシリカゲルなどは百貨店や通販サイトなどでも簡単に手に入るので、ぜひ試してみてくださいね。
お気に入りのスニーカーを少しでも長く履くために、参考にしていただければ幸いです。