シルクとはどんな素材?知っておきたい特徴、歴史、製造工程の基礎知識

繊維の中でも高級品として知られるシルク。その希少価値も非常に高く、シルクを使用しているアイテムは通常の繊維と比べ必然的に値段もかなり高値になる傾向があります。

皆さんもシルクという単語を耳にした時に、「高級そう」という印象をもたれるのではないでしょうか?

上品な光沢と滑らかな肌触りばかりが注目されがちですが、実はシルクってとても奥が深い繊維なのです。

今回はシルクがなぜ高級品として扱われているのか、その理由を探るべく、シルクの歴史や繊維としての特徴に至るまで詳しく解説していきたいと思います。

1 そもそも「シルク」ってどんな素材?

シルクの生地

皆さんは、シルクの原料となっているものが何なのかご存知ですか?

正解は、蛾の幼虫として知られる「蚕(カイコ)」から取れる繭。小学校の頃、授業の一環で蚕の幼虫を育てて繭を採取した経験がある方もきっと多いはずです。

蚕は幼虫から成虫になるまでの間、繭糸で自分自身を包みます。この繭糸が、蚕を狙って集まる外敵や外気の変化から守る役割を果たしてくれるわけです。

この繭糸をほぐして糸を引き出し、さらにいくつかの工程を経た後にようやくシルクの糸が完成します。

2 シルクの歴史

2-1 シルクの起源は5000年前の中国

シルクの起源は、なんと5000年前の中国まで遡ります。

当時はもちろん蚕の養殖もされていない時代。わざわざ野生の蚕を捕まえてきて、そこからシルクを紡ぎ出していました。紡いだシルクは上質な絹織物として仕立てられていたと言われています。

また当時、シルクを使った絹織物は高級品ゆえに国外への輸出は全面的に禁止されていました。シルクは、中国国内の貴族たちが独占している状態だったのです。

しかし、紀元前4000〜3000年頃になるとシルクは徐々に諸外国へと伝播していくようになったと言われています。

絹織物を用いた交易が活発化していくに連れて、中国の長安〜コンスタンチノーブル間の道はやがて歴史の授業でもおなじみの「シルクロード」と呼ばれるようになったのです。

2-2 日本に伝播したのは弥生時代頃とも

シルクが日本に伝播した時期は定かではありません。1つ分かっているのは、弥生時代頃の遺跡からは既にシルクを用いた絹織物が出土しているということ。

つまり弥生時代頃にはすでに養蚕が行われていたと考えることができます。

現在の日本に当たる「倭」の国の歴史について記した「魏志倭人伝」の中にも、当時の邪馬台国の女王 卑弥呼に対してシルクを贈る習わしがあったという旨の記述があるようです。

世界だけでなく日本にとっても、人々の生活とシルクは間には文化的にも密接な関係があったことが伺えます。

3 シルク(生糸)が完成するまでの道のりは長い

蚕の作った繭の状態では、残念ながらそのまま糸として利用できません。

採集した蚕の繭は、さらに「乾燥」→「選繭」→「選繭」→「繰糸」→「揚返し」という5つのプロセスを経る必要があるのです。では早速、各工程で行われる加工の内容ついて詳しく見ていきましょう。

3-1 乾燥

養蚕農家から送られてきた繭をそのまま何もせず12日間放置すると孵化して蛾になってしまいます。そうならないためにも蒸気の熱でしっかりと乾燥させ、繭の中の蛾を殺しておく必要があるのです。

また乾燥させておくことでカビが生えるのを防ぐこともできるため一石二鳥。

繭がしっかりと乾き切ったことを確認したら、温度・湿度共に厳しく管理された貯蔵庫(繭倉庫)で1ヶ月ほど保管されます。この工程は貯繭(ちょけん)とも呼ばれ、繭糸の性質を安定させるために必要です。

3-2 選繭

乾燥と貯繭が終わったら、今度は選繭(せんけん)の工程です。

質の低い繭はここで篩にかけ、形状や質感などに問題のない繭を選りすぐります。農家から送られてきた繭の全てが上質なシルクになれるわけではないのです…。

ただし、選繭を通過できなかった繭だからと言ってそのまま適当に処分されるわけではなく、副蚕物として再利用されます。

3-3 煮繭

次に、選繭によって選りすぐられた繭をグツグツと煮ていきます。これ煮繭(しゃけん)と呼ばれ、シルクを作る上で非常に重要な工程の1つです。

というのも、繭の状態では糸同士がタンパク質の1つである「セリシン」によって絡みついています。しかしこのセリシンは熱に弱いため、煮繭するとその性質が弱まり、繭をほぐしやすくできるのです。

ただし、少しでもお湯の温度管理を誤ると繭糸に含まれるセリシンが全て溶け出し、売り物にならなくなってしまいます。そのため、温度調節や塩梅の見極めには熟練の技術が必要です。

3-4 繰糸

煮繭でほぐしやすくした繭を使って、ここからいよいよ生糸を作る工程(繰糸)に入ります。

まずは繭の塊から糸口を探さなければなりません。稲の穂先で作った「みご箒」と呼ばれるホウキを使って、繭の表面を優しく撫でながら糸口を見つけていきます。

糸口が見つかったらこれを丁寧に束ねて、1本にします。バラバラの繭糸を束ねていったくらいで本当に1本になるのか疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。

実はここでポイントとなるのが、先ほど煮繭の時に登場したタンパク質の1つ「セリシン」。実はセリシンは乾燥させることで再び復活する性質があるため、複数の糸同士の接着剤として機能してくれるのです。

3-5 揚返し

最後に、生糸のクオリティを調整する工程である「揚返し」を行います。

自動繰糸機によって巻き取られた生糸はかなり引き伸ばされているため、そのままでは脆くて使えません。まずは低張力で小枠から大枠に巻き返していきます。

そのあとは、温度や湿度などを細かく調整しつつ、光沢・強度・風合いなどを上質なシルクに欠かせない各要素の状態を整えたら「生糸」の完成です。

生糸は工場などに出荷され、シルク製品の製造に使用されます。

4 上質なシルクの持つ5つの特徴

上質なシルクには、他の素材とは一線を画する以下のような特徴があります。

4-1 まるで真珠のような上品な光沢

シルクの持ち味といえば、何といってもその上品な光沢。

実は、シルクの繊維の断面は三角形になっています。繊維に光を当てた時、この断面がプリズムのように光を乱反射させることで、あの真珠を思わせるような美しい光沢を放つわけです。

ドレスやストールなど華やかで上品なアイテムにはうってつけの素材と言えるでしょう。

4-2 しなやかで優しい肌触り

上品な光沢に加えて、特質すべきはそのしなやかで優しい肌触り。

シルクは20種類近くのアミノ酸を含んだタンパク質の繊維です。その成分構造は「第二の肌」とも呼ばれるほど、私たち人間の肌とよく似ています。

そのため違和感や肌へのストレスもほとんどなく、肌馴染みも抜群というわけです。

4-3 夏涼しく、冬暖かい

シルクは放湿性・通気性・保温性の3拍子そろった非常に機能性の高い素材です。

特に放湿性に関してはコットンの1.5倍。通常のコットンも十分な放湿性を有していますが、それを上回る高い放湿性と通気性で快適な着心地を実現してくれます。

また保温性もシルクの持つ大きな魅力の1つ。その秘密は、シルクの繊維に空いた無数の小さな孔。この構造は「多孔質構造」とも呼ばれ、この穴の部分が外気をたっぷりと含むようになっています。

外気温が変動しても孔に含まれる空気が断熱材の役割を果たしてくれるため、たとえ薄手であっても暖かさをキープすることができるというわけです。

「夏涼しく、冬暖かい」、オールシーズン使える万能な素材と言えるでしょう。

4-4 静電気が起きにくい

何枚も着込む冬場は、着脱時の静電気が気になりますよね…。実は、そんな静電気対策にもシルクがおすすめ。

そもそも静電気の主な原因として考えられているのは空気の”乾燥”。その点、シルクは他の繊維よりも保水量が多いため、空気の乾燥する季節であっても静電気が起きにくくなると言われています。

先ほどの、「シルクは放湿性が高い素材である」という説明と矛盾するような気もしますよね。実は、放湿性が高いからといって全ての水分を外に逃がしているわけではありません。

シルクの繊維には常に10%前後の水分がしっかりとキープされています。この適度な水分が静電気を防いでくれるわけです。

4-5 紫外線をカットしてくれる

シルクには、高いUVカット効果も期待されています。

そもそもシルクの原料である繭糸は、紫外線から蚕を守る役割も果たしていました。そのため紫外線カット率は、なんと90%前後との報告もあるほど。

特に、紫外線の中でも炎症やシミの原因となるUV-B波を大幅にカットしてくれる効果が期待されています。

ここまでの説明からシルクには、放湿性・通気性・保温性、静電気防止、さらにはUVカット効果など機能性素材さながらのスペックがあることをお分りいただけたかと思います。

5 シルクは繊細な素材ゆえにデメリットも多い

シルクは上品な光沢と優しく滑らかな肌触りを併せ持つ上質かつ繊細な素材です。

それゆえに、取扱上の注意点やデメリットも他の繊維に比べて多くなります。

5-1 直射日光に当てると変色しやすい

先ほどシルクにはUVカット効果が期待できるという説明をしました。

これは裏を返せば、シルクが太陽から発せられる紫外線をたっぷりと吸収してしまっているということ。あまりに長い間強い日差しのもとに当てているとシルクに含まれるタンパク質が変性し、黄ばんでしまう可能性もあります。

上質なシルクの色合いを損なわないためにも、長時間直射日光に当てるのはできるだけ避け、洗濯後も風通しの良い場所で”陰干し”を行うようにしましょう。

5-2 引っ張りには強いが摩擦には弱い

シルクは他の繊維と比べ、引っ張りに強く裂けにくいという性質があります。その繊細な見た目と肌触りに反して、実は意外と強靭な繊維なのです。

しかしながらそれはあくまで引っ張りに関するお話。

シルクは摩擦に対して滅法弱く、例えば痒い場所がある時にシルクの衣服の上から爪を立てて掻き毟ると繊維に大きなダメージを与えてしまう可能性もあります。

そのほかにもザラザラした質感の場所にうっかり擦り付けたりするだけでもシルクがダメージを受けてしまうため、扱いには注意しなくてはなりません。

5-3 洗濯に手間がかかる

シルクは基本的に家庭用洗濯機に入れて洗濯することはできません。

万が一、他の洗濯物と一緒に洗濯機で洗ってしまうと、洗剤によって生地が変色したり摩擦で傷んだりしてしまう可能性もあります。これではせっかくのシルクの持ち味が台無しに。

可能であれば、シルク製品は極力汚れをつけないように扱うのがベストです。もし付着してしまった場合には、洗濯表示タグの指示に従いましょう。オシャレ着用の洗濯洗剤を使い、水で押し洗いするのが基本です。

ただし、洗濯後は日光による生地の変色を防ぐためにも日陰で平干しする必要があります。

ちょっと手間がかかるかもしれませんが、そこもまたシルクの愛嬌の1つです。

まとめ

本日は、繊維の女王として知られるシルクについてご紹介しました。

その上品な光沢や肌触りゆえに元から高級なイメージの強い素材だったかもしれませんが、放湿性、通気性、保温性、静電気防止、さらにUVカット効果など実は機能性も抜群なのです。

もちろん、繊細な素材であることは間違いありませんので、お手入れには相応の手間もかかります。

シルク入りの製品を購入する際は、シルクという素材の持つメリットとデメリット両方から検討した方が良いかもしれません。

今後のアイテム選びの基準の1つとしてぜひ参考にしてくださいね。