唯一無二の模様を作り出す「絞り染め」。その奥深い歴史とDIYの仕方とは?

みなさんは「絞り染め」と聞いて、何を思い浮かべますか?

もうしかしたら、「手ぬぐい」や「浴衣の柄」と思い浮かべる方が多いかもしれませんね。実は「絞り染め」は大昔から愛された歴史、そして伝統がつまった技法なのです。

今回は、そんな人々を魅了してやまない「絞り染め」の歴史と文化についてご紹介。

さらに、自分で作るオリジナルの「絞り染め」の方法もご説明します。

1 そもそも「絞り染め」とは?

絞り染め

1-1 布に圧力をかけて「模様」を出す染色方法

絞り染めとは、布の一部を糸などの紐で固くくくったり絞った後に染色し、括られた箇所が模様や柄として残るという染色法です。単色染めはもちろん、様々な色を掛け合わせた多色染めも可能です。

どんな太さの糸でどのくらい絞り、どの色に染めるかによって柄や色合い、凸凹感などの風合いが変わります。

そのため、決して同じものはできず、世界で1つの唯一無二の柄が出来上がるという魅力があります。

絞り染めは手法や呼び名は異なりますが、日本だけでなく世界中で愛される染色法です。

1-2「Tie-Dye(タイダイ)」とも呼ばれる

絞り染めは世界各国でも歴史のある技法で、英語で「Tie-Dye(タイダイ)」といい、多くの方が耳にしたことがあるかと思います。

「Tie=絞る」、「Dye=染める」という意味なので、単純に日本語の「絞り染め」と同じ意味合いとなります。

しかし、日本国内で生産される絞り染めの種類は、世界で生産されるものの中でも種類や技法が多く、日本の絞り染めに限っては「Shibori」と表記されることもあるそう。

2 世界の「絞り染め」の歴史

2-1 「絞り染め」の発祥はインド、中国などと言われる

絞り染めの染色法は非常にシンプルな方法であるため、誰が発明した、などの歴史はなく世界各地で自然発生的に生まれたとされています。

その中でも、歴史が古いとされているのがインド。

インドのマハラーシュートラ州北部にある「アジャンター石窟群」と呼ばれる古代の仏教石窟寺院群の壁画に、絞り染めをと見られる衣装をまとった夫人が描かれているのだそう。

そもそもその石窟群が作られたのは、古いものだと紀元前1世紀、新しいものでも5世紀後半〜6世紀とのことなので、絞り染めがその頃から存在していた可能性があり、長い歴史を感じることができます。

さらに現存する資料では、中央アジアのアスターナ古墳から出土した6世紀頃の中国の絹の絞り染め、中南米のインカ帝国時代以前の木綿絞りなど、世界各地で絞り染めの歴史が感じられます。

2-2 ヒッピー文化と絞り染め(タイダイ)

絞り染めやタイダイと聞くと、カラフルな柄や少しサイケデリックな柄をイメージする方が多いかと思います。

そんな影響を強く与えたのが、1960年代のアメリカでのヒッピー文化です。

ヒッピーとは、既成の価値観に縛られた生活を否定し、脱社会的行動をとった運動やその若者達のこと。そんな彼らが身にまとっていたファッションに、虹色のようなカラフルなタイダイが使用されていました。

「ヒッピーファッション」と呼ばれるタイダイやデニムなどを使用したファッションは、ヒッピーの思想とともに世界中に影響を与え、そのブームは日本にまで及んだのだそう。

そういった歴史的背景のあるカラフルなタイダイは、世界的な絞り染めの象徴のひとつとして、ヒッピーという枠を超えて人々に愛されています。

3 日本における「絞り染め」の歴史と代表的な技法

3-1 日本では奈良時代の頃から発達したと言われる

日本国外同様、日本での絞り染めも古くから存在していると言われています。

古いものでは、奈良時代(8世紀頃)に建てられたとされる正倉院や法隆寺に絞り染めが施されているものが発見されており、しかもその技術はかなり高度なものでした。

中でも、奈良時代の分様を表す染色法に「三纈(さんけち)」とよばれる「纐纈(こうけち)」「夾纈(きょうけち)」「臈纈(ろうけち)」の3つの染色法が盛んだったと言われています。

しかし、この時代は絞り染めのステータスはあまり高いものではなく、上層階級の意匠として使用されるものではありませんでした。

3-2 室町〜安土桃山時代に登場する幻の「辻ヶ花」

室町時代から安土桃山時代にかけて更に発展を遂げた絞り染めは、「辻ヶ花」という絞り染め法も生み出しました。

「辻ヶ花染め」とは、複雑な縫い締め絞りや現在では使用されない「竹皮絞り」などの高度な技法で作り出されたもの。

そこに摺り箔や刺繍も加えられ、室町時代や安土桃山時代の豪華できらびやかな文化を演出したそう。当時の武将である豊臣秀吉や上杉謙信、徳川家康など名だたる武将たちが着用した胴服と呼ばれる羽織などにもこの「辻ヶ花」が施されているようです。

しかし江戸時代になるにつれて、でんぷん粉で防染する「友禅」と呼ばれる技法が誕生すると、手間と時間のかかる「辻ヶ花染め」は次第に消滅し、「幻の技法」と呼ばれるようになりました。

一時は完全に消滅したとされる「辻ヶ花」ですが、名だたる工芸家たちによって復元され、現在では「憧れの「辻ヶ花」」として人気を集めています。

3-3 江戸時代の代表的な2つの「絞り染め」

江戸時代にはいると絞り染めは、大きく2つに分かれ発達していきます。1つはもっとも繊細で高級な「鹿の子絞り」、もう1つは庶民を中心に愛された「地方絞り」です。

3-3-1 高級絞り「鹿の子絞り」

「鹿の子絞り」は、奈良時代から「纐纈(こうけち)」として存在していましたが、江戸時代に入ってから本格的に発展しました。

「鹿の子絞り」の特徴は、子鹿の背のまだらのような模様と、手仕事であることを表し、付加価値をもたせた布の凹凸感。その模様を施すのに多くの手間がかかることから、前面に模様が施された「総鹿の子」は当時贅沢品として規制されることもあったそう。

また生産地はいくつかありますが、その中でも京都で生産される「京鹿の子絞り」は1976年に国の伝統工芸品に指定され、現在まで守り継がれています。

3-3-1 庶民的な「地方絞り」

高級品である「鹿の子絞り」に対し、庶民から愛されたのが「地方絞り」。

「地方絞り」とは、木綿布を藍染めにした庶民的な絞り染めです。「地方絞り」として代表的なものは、大分県の「豊後絞り」や愛知県の「有松・鳴海絞り」。

中でも「有松・鳴海絞り」は簡素な技法ながらも、多種多様な柄が生み出されました。

さらに当時の東海道五十三次の宿駅や鳴海宿に出張販売され、大流行となり江戸時代以降最大の生産地となりました。元禄時代には浴衣などにも施され、お土産として売られていたそうです。

3-3 戦争による衰退から現在まで

明治時代にかけて日本各地で生産された絞り染めは、戦後の不況や物資の統制の影響を受け徐々に衰退。

さらに後継者難や、安価な海外製品との競争によって、現在の主な産地は京と有松のみとなっています。しかし、岩手県や福井県など小規模ながらも各地で絞り染めの文化が残っている地域もある、とのこと。

日本にも古い歴史のある絞り染め。一時は全国各地で生産されることもありましたが、現在は生産地が少なく、昔よりももっと貴重で歴史と伝統の重みを感じるものであると感じられます。

4 自宅でできる「絞り染め」の方法とは?

これまで様々な絞り染めの歴史をご紹介してきましたが、歴史と伝統を知った上で自分でDIYするとなるとハードルが高く感じるかたもいらっしゃるかもしれません。

しかし、大昔からたくさんの人々に親しまれてきた技法であるからこそ、手法はシンプルであり、今の自分でも挑戦できるもの。

ぜひ、下記を参考にご自宅で、世界に1つしかない自分だけの「絞り染め」を作ってみてください。

4-1 絞り染めに必要な材料と道具

自宅で絞り染めを行うにあたって、まずは以下の5点を用意しておきましょう!

絞り染めに必要なものリスト

  • ゴム手袋
  • バケツ
  • 水(染料によってはお湯の場合も)
  • 染料
  • セスキ炭酸ソーダ
  • 輪ゴム
  • スーパーボール

4-2 まずは下準備から

必要な材料と道具が揃ったら、絞り染めの下準備に入ります。

絞り染め下準備の手順

  1. 染まりやすくするために、まずは生地を一度濡らして絞っておく
  2. 染料の説明書をチェックし、説明に記載されている割合で水(もしくはお湯)に染料を加えて混ぜる
  3. セキス炭酸ソーダを加え、さらによく混ぜる(ちなみに塩を代用してもOK)

4-3 絞り染めの王道「輪絞り」のやり方

今回は絞り染めの中でも王道の「輪絞り」に挑戦してみましょう。

輪絞りは、輪ゴムとスーパーボールさえあれば簡単にできる絞り染めの方法の1つです。

輪絞りの手順

  1. 生地の裏側の面にスーパーボールをのせて包み、輪ゴムでしっかり留める
  2. 留め終わったら、そのまま染料液にいれて2時間ほど置いておく
  3. 生地が染まったら流水ですすぐ
  4. 最後にしっかりと乾かしたら完成

中でもポイントとなってくるのは、スーパーボールと輪ゴムを使った手順1。

輪ゴムをしっかりとめないと、絞った部分にも染料が入ってしまう可能性があります。しっかりと硬くきつく締めることを意識しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

絞り染めやタイダイの歴史はいかに深く、そして世界中で様々な人々に愛され、発展して現在のファッションに活かされているかがお分りいただけたかと思います。

さらに、近年では世界各国の絞り染めの歴史や伝統の交流を目的とした「国際絞り会議」が頻繁に開催され、絞り染めを通した文化交流が行われているそうです。

奥深く、上品かつ本質思考な「絞り染め」。

伝統で憧れの絞り染めに興味を持たれた方はぜひ手に取って、あなたの感性で選んでみてください。

そして、自分だけの1枚を自身の手で作り上げたい、と思われる方はぜひあなたの感性でオリジナルの1枚を作ってみてください。

きっと、その1枚はあなたのクローゼットの数ある洋服の中でも、貴重で大切な1枚になること間違いないでしょう。