「レーヨン」ってどんな繊維?その知られざる歴史とメリット・デメリットについて

皆さんは、衣類に使われている繊維が「天然繊維」と「化学繊維」に分かれることをご存知ですか?

「天然繊維」は麻や羽毛、絹、シルクなどのいわゆる植物や動物から繊維を取り出したもの。一方「化学繊維」とは化学的な手法で人工的に作り出した繊維で、「天然繊維」を模倣して作ったものです。

今回は、一番初めに「化学繊維」として誕生した「レーヨン」について詳しくご紹介します。

1 レーヨンとは?

1-1 レーヨンは再生繊維の一種

レーヨンは木材パルプを原料として人工的に作られた化学繊維です。

天然に存在する植物原料(セルロース)を原料とし、化学的な繊維として再生させる「再生繊維」と呼ばれる繊維のひとつにレーヨンが存在しています。

1-2 「レーヨン」の意味は「光る糸」

「レーヨン」は英語で” Rayon”。”Ray”=「光線」と”Cotton”=「綿」を組み合わせた言葉です。

また、ビスコース法という製法で作られることから「ビスコース」と呼ばれることも。

レーヨンはもともと絹に似せてつくった再生繊維であり、昔の日本では、「人絹(じんけん)」やステープル・ファイバーの略である「スフ」とも呼ばれていました。

1-3 レーヨンの製造過程と形状

レーヨンを含む「再生繊維」の製造過程は、まず木材パイプの主成分である「セルロース」を化学薬品で溶解し、ビズコース液を作ります。

これを細いノズルから凝固液野中に押し出すことでレーヨンが完成します。

そうしてできあがったレーヨンの形状は、側面にいくつものひだがあり、断面は不規則な形をしているのが特徴です。

1-4 「ポリノジック」もレーヨンの仲間

レーヨンと同じ原料や製造方法で、レーヨンの弱点である「強度」、「しわになりやすい」点を高分子レベルで改良したものが「ポリノジック」。日本で研究・改良された「改質レーヨン」繊維です。

レーヨンは側面にひだがあるのが特徴ですが、この「ポリノジック」は側面にはひだがなく、断面が円形である点がレーヨンとの違いです。

2 レーヨンの始まりとその歴史

近世のヨーロッパでは、貴族しか手に入れられない高級繊維である「絹」を人工的に作りだそうと様々な研究が実施されていました。

そんな中、1884年にフランスのシャルドンネ伯が「硝酸セルロース」と呼ばれる人工絹糸の発明に成功。これがレーヨンの始まりです。

しかし、この「硝酸セルロース」は極めて燃えやすく危険で、この繊維を使ったドレスを着たモデルが炎上死してしまう、という悲劇が起きてしまうほどでした。

その後、1898年にビスコース溶液からレーヨンを製造する方法が発見されました。さらに1905年にイギリスのコートルズ社がビスコース法によるレーヨンの工業生産を始めて、爆発的な人気となり、現在に至ります。

3 日本における「レーヨン」の歴史

2-1 レーヨンの輸入開始

日本では明治時代末期に、東京の糸商であった西田嘉兵衛の西田商店と、京都の糸商であった藤井彦四郎の藤井彦四郎商店が、フランスのシャルドネ社やドイツのグランツストフ社からの輸入契約を結んだことから始まりました。

本格的な輸入は1905年からはじまり、この両者が以後の日本国内におけるレーヨンの需要拡大と普及に大きく寄与したとされています。

2-2 レーヨンの国内生産

日本初のレーヨン製造の国産化の試みは、日本セルロイド人造絹糸株式会社が始まりです。

この試みは、中止となってしまいましたが、日本各地で欧州の文献情報をもとにレーヨンの製造法を研究する者たちが存在したのだそう。

そして1915年に伊勢の松坂にて、中島朝次郎が日本で最初に、銅アンモニアレーヨンの工業生産を開始しました。ここで生産されたレーヨンは、大正天皇即位大典に製品を献納することもありましたが、資金に恵まれず、すぐに行き詰ってしまいます。

一方米沢に工場のある鈴木商店は、1914年にビスコース法によるレーヨンの実験的製造に成功。それにより、日本で最初のビスコース法レーヨン糸の製造が開始されました。この工場はのちの「帝人株式会社」の前身となります。

その後レーヨンの輸入価格が騰貴し、次々にレーヨンを国内生産する会社が設立され急成長。しかしながら、日本の第1次世界大戦終結による市場暴落で生き延びたのはたったの3社のみ。

このようにレーヨンの国内生産は紆余曲折ありながらも発展し続け、1930年代には日本のレーヨン工業は世界のトップクラスの規模となりました。

4 レーヨンのメリット

4-1 なめらかな肌触りと光沢感

レーヨンの主成分は綿や麻と同じセルロースであるため、基本的にはそれらと性質が似ていると言われています。そんな中でレーヨンの最大のと特徴と言えるのが、なめらかな肌触り美しい光沢感

さらには繊維が柔らかく、コシがない為、ドレープ性も抜群です。ドレープ性とは、「優美にまとわせる」という意味。

そんな上品な見た目から、婦人向けの肌着やブラウス、ワンピースなどに使われることが多くあります。

4-2 吸湿性と染色性の良さ

レーヨンの吸湿性11%と化学繊維の中ではもっとも高く、汗をよく吸い、染色性が良いのも特徴。

吸湿性の高さに加えて、繊維の性質が弱酸性である為、汗の臭いなどのアルカリ性の成分を中和してくれ、消臭効果にも優れています。そのため、汗をよくかく夏の季節には最適な繊維であると言えます。

さらに、吸湿性の高さは染色性の高さにも直結します。

染色しやすいレーヨンは、色鮮やかな発色が可能であるだけでなく、様々な柄を表現することができます。

4-3 熱や静電気に強い

放湿性の高いレーヨンは、熱にも強く、静電気を起こしにくい素材と言えます。

さらに、原料が天然に存在する植物原料を使用しているため、焼却した場合でも有害物質の発生がほとんどないとも言われています。

5 レーヨンのデメリット

5-1 擦れると白色化しやすい

レーヨンが使われている衣類を着用していると、ポケット口や食べこぼしを拭いた部分が白っぽくなることがあります。

これは、摩擦による繊維の「白化現象」と呼ばれます。

繊維を撚り集めて1本にした糸であるためん、着用や洗濯時の摩擦により毛羽立ち、その部分の色が白っぽく見えてしまうことが多くあります。

そういった現象が多く起こるのが、このレーヨンのデメリットとも言えます。

5-2 水に弱くシワになりやすい

レーヨンは吸水性に優れているメリットがある、とご紹介しましたが、逆に言えば洗濯時には水をたくさん吸い、乾いた時にはシワになりやすいというデメリットもあります。

また、雨が降った時などに水シミもできやすく、雨の日には避けたい素材です。

さらにはレーヨンは水に濡れると強度が乾燥時の1/3にまで低下するとも言われており、水にはとにかく弱い素材と言われています。

さらにうっかり水洗いした際には、大人サイズから子供サイズにまで縮んでしまう、なんてことも。

自宅での洗濯や取り扱いには細心の注意が必要です。

6 レーヨン衣類のお手入れの仕方とは?

6-1 洗濯表示は確認必須

レーヨンはとても繊細な素材です。洗濯表示を確認して、「水洗い不可」と表記されていれば家庭での洗濯は諦めてクリーニングに出しましょう。

「水洗い可」であっても、少しの汚れの場合はその部分だけを濡れタオルなどで優しく叩いて落とすことをおすすめします。

もしどうしてもレーヨン素材の衣類を丸ごと洗濯機で洗いたい場合は、以下のポイントを意識しておきましょう。

  • おしゃれ着用の中性洗剤を使用し、1枚ずつネットに入れてから「弱」コースで洗う
  • 色柄物は色移りすることがあるため、基本的には他の衣類と一緒に洗うのを避ける
  • もし他の衣類と一緒に色柄物を洗濯したい場合には、中性洗剤を衣類の目立たないところに数分間漬け、その後白い布などに当て色移りがないか確認してから判断する

6-2 洗濯後は、風通しの良い場所で陰干しが基本

洗濯・脱水後はシワをしっかり伸ばし、風のよく通る場所に陰干しをしましょう。日が当たるところだと、直射日光で色あせてしまう可能性もあります。

乾燥後もシワが気になる場合は、完全に乾いていることを確認した上でアイロンをかけるようにしましょう。温度は130℃〜160℃の中温で、当て布をしながら掛けるのが基本です。

高温やスチームだと衣服が傷ついてしまう可能性もあるので注意しましょう。

まとめ

今回は、普段あまり深く知る機会のない「レーヨン」についてご紹介しました。

本来レーヨンが高級素材である絹に似せて作ったものであった、という事実を知らなかった方は多いのではないでしょうか?

こういった化学繊維も、昔の人々の努力の研究があってこそ、現代でも様々なシーンで使われているのだと思うとレーヨンを使った衣類だけでなく衣類全体に対してもっともっと大切に扱おうと思えますね。