年齢や性別を問わず多くの人々に愛される「ローファー」。
ローファーとは、シューレースが使用されていないスリッポンタイプのレザーシューズのことです。着脱が簡単でシンプルなデザインのため実用性、汎用性が高く、万能な革靴と呼ばれることも。
日本では、多くの学校で制服として採用されていることから、ローファーは学生が制服に履く革靴というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
そんな学生服の代名詞とも言えるローファーですが、実は「アイビールック」を始めとした伝統的なファッションスタイルやカルチャーと密接な関わりを持っていることでも知られています。
本記事では、そんなローファーについて概要から歴史、種類、適切な着用シーンに至るまで詳しくご紹介します。
1 ローファーとは?
そもそも「ローファー」とは、シューレースが使用されていないスリッポンタイプのレザーシューズのことです。そのシンプルかつクリーンな外観から、日本では制服として多くの学校で採用されています。
シューズのアッパー中程に施された「サドル」と呼ばれる馬の鞍を模したパーツは、ローファーを象徴するデザインとして有名です。
また、ローファーは、同じくスリッポンタイプのレザーシューズ「モカシン」にルーツを持つとされ、アッパーのトゥ部分に「モカシン縫い」と呼ばれるU字状のステッチが施されていることも特徴の一つ。
数あるレザーシューズの中でもシンプルなデザインを持つローファーは、様々なファッションスタイルとの相性が良く、多くの人々に愛されています。
モカシンについて、詳しくは下記の記事を参考にしてみて下さい。
2 ローファーの歴史
老若男女を問わず着用されるレザーシューズの定番ローファー。実はローファーの始まりは古く、伝特的なレザーシューズとしても知られています。
そんなローファーが誕生した経緯として有名なのが、イギリスとアメリカそれぞれを起源とする説です。
まずイギリスの説では、ローファーが始めて誕生したとされるのは1920年代。当時のイギリス王室や貴族階級の人が室内で着用するルームシューズとして製作されたのが始まりとされているようです。
一方、アメリカを起源とする説では1930年代が始まりとされています。ノルウェーの靴職人「Nils Gregoriusson Tveranger」がアメリカを訪れ靴作りを学んだ際、北アメリカの先住民の靴「モカシン」に着目。後にノルウェーに帰国し、「Aurland moccasin」と呼ばれるローファーの起源となる靴を製作したそうです。
どちらの説も、現在のローファーの形状がモカシン縫いを使用していることからモカシンを起源としていることは確かだといえるでしょう。
また、ローファーの名称は着用の際にシューレースを結ぶ必要がなく、簡単に脱ぎ履きが可能なことから怠け者を意味する単語”loafer”が由来とされています。
3 ローファーの種類
3-1 ペニーローファー
ローファーの種類の中でも最もスタンダードなデザインが「ペニーローファー」です。
ペニーローファーとは、シューズの甲部分にスリットが入ったサドルストラップが縫い付けられたローファーの基本とされるモデルのこと。学生服として採用されている革靴もほとんどがペニーローファーなため、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
実は、このペニーローファーという名称は、50年代にアメリカで登場し、60年代に日本でも流行したことで知られる「アイビールック」に深く関係しているのです。
アイビールックとは、50年代にアメリカの東海岸の8つの私立名門大学の総称「アイビーリーグ」の学生に着用されていたファッションを基に「IACD(国際衣服デザイナー協会)」が発表したファッションスタイルのこと。
当時のアイビーリーグの学生達が、ローファーのサドルストラップのスリット部分に1セント硬貨を挟んでいたといわれています。そのため、1セントの愛称を付けたペニーローファーやコインローファーと呼ばれるようになったそうです。
3-2 タッセルローファー
「タッセルローファー」とは、「タッセル」と呼ばれる紐の先端に施される房状の装飾を甲部分に付けたローファーのことです。
主にタッセルローファーは、短いひもを結んでタッセルがついているもの、サドル ストラップの上からタッセルがついているもの、キルトと組み合わせたキルトタッセルローファー の3つが存在します。
タッセルローファーが誕生したのは、1948年。当時のアメリカのハリウッド俳優「Paul Lukas(ポール・ルーカス)」が靴紐にタッセルが施された靴をイギリスで購入したことが始まりといわれています。
ポール・ルーカスはイギリスから帰国後、それぞれ別の二店舗の靴屋に、同じようにタッセルのついたさらにシンプルなデザインの靴の製作を依頼したそうです。
するとどちらのメーカーもアメリカの老舗靴メーカーの「Alden(オールデン)」に靴の製作を依頼し1948年、世界で初のタッセルローファーが誕生しました。
後の1957年、当時のアメリカントラッドスタイルの代表的ブランド「Btooks Brothers(ブルックスブラザーズ)」がタッセルローファーを発売。するとタッセルローファーは、弁護士やビジネスマンなども履き始めるほどの大成功をおさめます。
これまでのローファーが持つカジュアルな印象を覆し、ビジネスシーンでもその地位を獲得するに至ったのです。
3-3 ビットローファー
「ビットローファー(ホースビットローファー)」とは、サドルストラップに金具を用いたデザインのローファーのことです。このサドルストラップの金具は、馬に噛ませるくつわ「ハミ(英:Horse Bit)」がデザインのモチーフになっています。
ちなみにビットローファーの産みの親は、イタリアを代表するファッションブランドの「GUCCI(グッチ)」。GUCCIは、レザー製品や馬具を製作していたブランドとしても有名です。
そんなGUCCIが手掛けたアイテムの数々は、随所に馬具をモチーフにしたアイコンやデザインが使用されています。
ビットローファーは、GUCCIが本来得意とするブランドの意匠をこらしたアイテムといえるでしょう。
3-4 キルトローファー
「キルトローファー」とは、サドルストラップにフリンジ状のレザーに切れ込みが入った「キルト」と呼ばれる特徴的なデザインが施されたローファーのことです。キルトは、スコットランドの民族衣装「キルトスカート」がデザインのモチーフといわれています。
また、キルトローファーはキルトのデザインはそのままにサドルストラップに変化を加えることが可能なため、デザインのバリエーションが豊富なことも特徴の一つ。
そんなデザインが豊富なキルトローファーの中でも基本とされているのが、サドルストラップにキルトを付けたデザイン。
このデザインでは主に、サドルストラップに飾りのないシンプルなものとペニーローファーのようにスリットが入ったものの2種類が存在します。後者のスリットが入ったタイプは「コインキルトローファー」と呼ばれることもあるようです。
その他にも、ビットローファーと組み合わせたビットキルトローファーやタッセルを付けたキルトタッセルローファーなどが存在します。
3-5 ヴァンプローファー
数あるローファーの中でも最もシンプルなデザインで知られる「ヴァンプローファー」。
ヴァンプローファーとは、モカシン縫い以外の装飾が施されていないタイプのローファーのことです。
ヴァンプローファーの他にもアッパーの形状がコブラを連想させることから「コブラヴァンプ」、ベネチアのボートに見えることから「ベネチアン」などとも呼ばれています。
また、ヴァンプローファーはカジュアルなイメージのローファーの中でも特にくだけた印象が強いシューズです。ジャケットスタイルとの相性は良いものの、ビジネスシーンでの着用は避けるのが無難といえるでしょう。
4 ローファーの適切な着用シーンは?
4-1 フォーマルなシーンでの着用はNG
ローファーを始めとしたレザーシューズを着用する際、事前に押さえておきたいのが適切な着用シーンです。
本記事で紹介したローファーは、どちらかというとカジュアルなイメージを持つ革靴。冠婚葬祭を始めとしたフォーマルなシーンでの着用はNGとされています。
また、ビジネスシーンなどでの着用も基本的には避けるようにしましょう。
しかしながら、ビジネスシーンにおいてローファーが必ずしも不適切とされている訳ではありません。
近年では、接客業やサービス業などの丁寧、誠実な印象を必要とする一部の職種を除き、ビジネスシーンでの着用も徐々に受け入れられてきているようです。
4-2 トラディショナルなスタイルとの相性が抜群
ローファーはフォーマルなシーンには向かないとされている一方、カジュアルなシーンでは非常に汎用性が高いことでも知られています。
そんなローファーとの相性が抜群なことで知られているのがアメリカントラッドと呼ばれるファッションスタイルです。ペニーローファーの名称の由来にアイビールックが関係しているなどアメリカントラッドを語る上でローファーは欠かせません。
その頃の影響から、現在でもジャケットスタイルにローファーを合わせるコーディネートは多くみられ、流行に左右されず多くの人に愛されるレザーシューズといえるでしょう。
まとめ
今回は、「ローファー」についてご紹介しました。
ローファーとは、モカシン縫いが特徴的なシューレースのないスリッポンタイプのレザーシューズのこと。着脱が簡単でシンプルなデザインの革靴として親しまれています。
中でも最もスタンダードなデザインのペニーローファーは、多くの学校で制服として採用されていることでも有名です。
そんなローファーはカジュアルな印象を持った革靴として知られています。そのため、冠婚葬祭などのフォーマルな場面での着用には適さないものの、ビジネスシーンでの着用は近年では徐々に受け入れられてきているようです。
しかしながら、接客業やサービス業などの丁寧、誠実な印象を必要とする職種での着用は避けるのが好ましいでしょう。
適切なシーンでローファーを取り入れることで、日々のコーディネートをより豊かにしてくれるのではないでしょうか。
ローファーを検討中の際はぜひ本記事を参考にしてみてくださいね。