素材染めの基本。「顔料」と「染料」の違いと、素材別に見る「染料」の種類とは

日頃ご自身が着ている衣類が、どういった工程を経てこの色が着色されているのか、など考えることは少ないかと思います。

しかし、「素材染め」には様々な種類の染料や染料方法が使用されており、素材によって使用される染料は大きく異なるのです。

今回は困惑する方も多い「染料」と「顔料」の違い、そして数ある「染料」の中でも多く用いられる「合成染料」の代表的な染料をご紹介します。

1 素材を染める色材は「顔料」と「染料」の2つにわかれる

顔料と染料

そもそも、固有の色を持つ色素を「色材(しきざい)」と呼び、言わば「色の原料」のことをさします。色鮮やかな素材の着色にはこの「色材」が使用されています。

この色材は大きく「顔料」と「染料」とに分けられ、どちらも色を帯びた粉末です。

よく「顔料」と「染料」の違いがわからない、という方が多くいらっしゃいますが、全くの別もの。それぞれ詳しくご説明します。

色材(しきざい)
顔料 染料
天然顔料 合成顔料 天然染料 合成染料

2 「顔料」とは?

顔料とは、色素の粒子が大きく、組織の内部には入り込めずに表面に載っているもの。

水や油に溶けないのが特徴で「ピグメント」とも呼ばれています。

顔料には繊維と結びつく性質がないため、顔料で繊維に色をつけるためには「バインダー」と呼ばれる接着剤のようなものを混ぜなければ着色できません。

顔料は、基本的に印刷インキや絵の具として使われており、「合成顔料」と「天然顔料」の2つに分かれています。

2-1 天然顔料と合成顔料

天然顔料は主に天然土を原料としており、紀元前から様々な形で天然顔料が使用されていました。

原料である天然土は特殊な地層から採掘され、黄、赤、茶、緑などのアースカラーと呼ばれる自然な色彩が特徴で、主に絵画や建築用として使用されていたそう。

天然顔料は自然に形成されたものであるため、野ざらしの環境でも変色しにくく、耐光性、耐熱性に優れているのが特徴。

一方、「合成顔料」とは、鉄や銅、鉛などの金属を化学反応させることで得られる酸化物や結合物から作られるもの。

天然であるが故に採れる量に限りのある天然顔料。それを「合成顔料」として人工的に製造し始めたのが18世紀から20世紀のころと言われています。その後、産業革命や科学革命によって合成顔料が発達してきました。

3 「染料」とは?

水や油に溶けない「顔料」に対して水や油に溶け込み、布や紙などの繊維の間に染み込んで染める性質を持つのが「染料」。

染料は、普段私たちが着る衣類の染色に頻繁に使用されています。

「顔料」同様に「染料」も大きく「天然染料」と「合成染料」とに分かれ、その中にも様々な種類が存在します。

3-1 天然染料

植物や動物から抽出した天然色素を用いた染料が「天然染料」。

原料としてもっとも多い植物には、アカネや藍、紅花など様々な植物が使用されています。

動物系の原料としては、メキシコのサボテンにつくカイガラ虫、地中海のムラサキ貝などが使用されています。

また、天然染料を用いた染色は「草木染め」と呼ばれています。

天然染料を用いた草木染めは、色素の含有量が一定せず同じ色を出すことがほぼ不可能と言われています。さらに、染色の時期が決まっていたり、時期によって色が異なったりと天然ならではの問題もあるため、工業的に量産には向いていませんが、趣味や手工芸としては魅力的な染色方法と言えるでしょう。

3-2 合成染料

一方で、石炭・石油などを原料として化学工業でつくられる染料を「合成染料」と呼びます。

天然染料による染色は原料が入手しにくく手間もかかることから、現在使用されている染料のほとんどはこの「合成染料」を使用して染色されています。

天然染料と比べると、品質が安定していたり安価であったり、長期保存ができたりと量産向きであると言えます。

合成染料の種類は数多くあり、それぞれ染められる素材が異なります。

4 合成染料の種類と染められる素材とは?

4-1 綿や麻、レーヨン、テンセル、キュプラ、紙などの「セルロース繊維」

4-1-1 直接染料

染料をお湯、または水に溶かすだけで素材を染めることができるのが「直接染料」。

染料の中でも比較的手軽に染めることができるのが特徴です。家庭での染色も可能。

簡易さに秀でた染料ですが、一般的に汗や洗濯、日光などには弱いと言われています。

4-1-2 反応染料

直接染料よりも濃く鮮やかな染色が行え、発色や再現性が特徴の「反応染料」。

工業製品等の染色作業を行う、染色工場で最も使用される染料のひとつです。

特に綿やレーヨンを染めるのに多く使用されており、鮮やかな色からくすんだ色まで様々な色を出すことができます。

4-1-3 硫化染料

硫化染料は、染料に硫黄原子を含む染料で、硫化ナトリウムを加えたアルカリ性還元浴で染めます。

一般的に不鮮明な色相ですが、複雑で味わいのある色が特徴です。

4-1-4 バット染料(インディゴ・スレン染料)

アルカリ浴で強い還元剤を使用して酸化発色させる染料をバット染料と呼びます。

ブルージーンズに使用されるインディゴ染料や、作業用ユニフォームなどの厳しい場所で使用されるものが多いスレン染料などもこのバット染料と呼ばれる染料に分類されます。

中でもスレン染料は、すべての染料中でもっとも色落ちしにくい染料として有名。

4-2 ウール、絹、ナイロン、皮革などの「タンパク繊維」

4-2-1 酸性染料

染色時に染液に「酸」を加えて染めることから「酸性染料」と呼ばれています。

特徴は鮮やかな発色で堅牢度が良く、特にウール、絹、ナイロンを染める染料として知られています。

堅牢度とは、染色の丈夫さのこと。堅牢度が高いほど色落ちがしづらいと言われています。

4-2-2 含金酸染料

酸性染料の分子中に金属を有している染料。

色の耐久性は酸性染料より強いですが、鮮明な色を持つ染料はありません。

4-3 ポリエステル、アセテート、ナイロン、樹脂など

4-3-1 分散染料

「分散染料」は水に溶けない染料ですが、「分散剤」を使用することで水に溶かして素材を染めることができます。

高温高圧下でむりやり押し込むようにして染めるため、家庭では染めることのできない染料です。

4-4 アクリル(白地のもののみ)、竹、木片、籐など

4-4-1 カオチン染料

「カオチン染料」は、アクリル繊維に使用される改良塩基性染料のこと。

鮮やかな発色が特徴で、堅牢度がきわめて良い染料です。

まとめ

染料にはそれぞれどんな素材に向いているかが異なり、さらにどの染料にも長所や短所が存在します。

そして、その染料の長所・短所を見分けた上で、その求められる性能に応じて加工方法も選定されているのです。

日頃生活していて、素材染めに関して考えることは少ないかと思います。

しかし今回ご紹介したことを踏まえると、今ご自身が着用している衣類も、様々な過程を経て自分の手元にあるということが改めて感じられるかと思います。