キャンバススニーカーの雄といえば、やはりCONVERSE(コンバース)。
そんなコンバースの中で最も長い歴史を持つのが、ALL STAR(オールスター)です。
とりあえず1足欲しくなってしまう絶妙なデザインとローテクな雰囲気は、老若男女問わず幅広い層から人気を集めるまさに名作中の名作。
一方で定番すぎるがゆえに、オールスターの歴史や種類についてしっかりと説明できる方は意外と少ないのではないでしょうか?
今回は、そんな「灯台下暗し」なコンバースオールスターの歴史と変遷やラインナップに至るまで、スニーカーフリークなら絶対に知っておきたい基本知識を徹底解説いたします。
1 そもそもコンバースオールスターとは?
コンバース オールスター(CONVERSE ALL STAR)は、1917年にコンバース・ラバー・シュー・カンパニーによって開発されたキャンバススニーカーの1つ。
当時のコンバース社がメイン商品として展開していたのは、ラバーシューズ。
しかしながら、このラバーシューズは冬季に売り上げが集中していたため「通年で販売できる製品を展開したい」との理由からオールスターの開発に乗り出したのだそう。
生産をスタートしてから100年以上経過した現在も、細かなディテールの変化やマイナーチェンジこそあれ、そのデザインは大半はほとんど変わっていません。
ラバー製のソールに、キャンバス地のアッパーとヒールパッチ。シンプルでありながらさりげない存在感を放つオールスターは、100年も前からすでに「完成されたスニーカー」だったわけです。
2 まずは知っておきたい。オールスターの歴史のお話
2-1 オールスターとチャールズ・H・テイラー
オールスターは元々「バスケットシューズ」として開発された商品。
今でこそファッションアイテムとして認知されているオールスターも、元をたどれば「競技靴」の1つに過ぎなかったのです。
そもそもバスケットボールというスポーツが誕生したのは、1891年。オールスターの生産がスタートした1917年は、まだまだバスケットボールというスポーツの黎明期でした。
コンバースにとって大きなきっかけとなったのが、プロバスケットボール界を賑わせていたチャールズ・H・テイラーの存在。彼が競技中にオールスターを着用したことで、一躍注目の的に。
そんなチャールズ・H・テイラーの存在とバスケットボールの普及に伴い、オールスターの知名度は次第に高まっていったのです。
2-2 ざっくりおさらい。オールスターの変遷
ここで、オールスターの登場から近年までの歴史と変遷を駆け足でチェックしておきましょう。
詳細なディテールの変化全てを語ることは難しいですが、全体的な流れを知っておくだけでもお手持ちのオールスターへの愛着がグッと深まるはずです。
1917年 オールスターの登場
コンバース・ラバー・シュー・カンパニーの展開していたラバーシューズに代わる、通年販売可能な主力商品の1つとしてオールスターの生産がスタート。
今なお世界中に多くのファンを抱える名作が、産声をあげた瞬間です。
1918年 チャールズ・H・テイラーがオールスターを愛用
当時、大学リーグのスタープレーヤーとして注目を集めていたのがチャールズ・H・テイラー。
晴れてプロバスケットボールリーグ入団を果たすと、コンバース社のオールスターに一目惚れ。その品質に惚れ込んだチャールズ・H・テイラーは、現役時代を通じてオールスターを愛用しました。
ちなみにプロ引退後は、コンバース社に入社。これまでプロバスケットプレーヤーとして培った知見を活かしシューズ開発と販売に尽力しました。
1925年 「BIG C」のロゴが登場
「星」のマークでお馴染みオールスター。
一方で販売当初の製品には星のマークではなく、CONVERSEの頭文字「C」を取った「BIG C」と呼ばれるアンクルパッチが施されていました。
またこのアンクルパッチは、バスケットプレーヤーのくるぶしを保護する役割も担っていたと言われています。
1928年 お馴染み「星」のアンクルパッチが誕生
お馴染みの「星」マークのアンクルパッチが誕生したのは1928年。
星マークの周りを「Converse Athletic Shoes」というテキストがグルっと囲む、比較的シンプルなデザインが特徴的でした。
あまりに有名なロゴゆえに創業当初から星マークを貫いてきたのかと思いきや、実はデザインをモディファイした上で誕生していたわけです。
1946年 アンクルパッチの刷新
1946年、アンクルパッチのデザインに大きな変化が起こります。
プロ引退後にコンバース社に入社しオールスターの普及と企業の成長に尽力したチャールズ・H・テイラーの功績を讃え、星マークの上に「Chuck Tailor」の文字がプリントされるようになったのです。
ちなみにヒールラベルには、1930年代頃から既に「Chuck Tailor」の文字がプリントされていました。
1957年 定番「ALL STAR OX」が登場
1957年より生産をスタートしたのが、今ではすっかり定番の「ALL STAR OX(オールスター・オックスフォード)」。
かつてオックスフォード大学の学生が履いていたローカットの紐履が、モデル名のルーツなのだとか。(*諸説あります)
これまでハイカットしか生産していなかったオールスターですが、オックスフォードの登場を機にローカットタイプスニーカーも人気を集めるようになります。
1962年 オールスターの基本形がついに完成
基本的なデザインはそのまま、細かなマイナーチェンジを重ねてきたオールスター。
1962年になると、アンクルパッチの星マーク左側に「Chuck」、右側に「Tailor」の文字が入ったデザインに変更され、現行のオールスターの基本形がついに完成します。
以降は、1976年にヒールラベルから「Chuck Tailor」の文字が消え「ALL☆STAR」に統一された点を除き、基本的な構造やディテールに大きな変更は加えられていません。
1970年~ 素材・色・柄をはじめ様々なラインナップを展開
オールスターの基本形が完成以降は、従来はなかったラインナップを数多く展開。
1971年には、カラーバリエーションを2食から9色展開へ。
さらにこれまで展開してこなかった柄物のデザインやレザー素材のオールスターをはじめ、様々なバリエーションと工夫を施すことでファンの心を掴んで離すことはありませんでした。
2000年~ コラボレーション企画を数多く発表
2000年以降は、国内外のブランドとオールスターのコラボレーション企画を数多く発表。
中でも、ENGINEERED GARMENTS(エンジニアードガーメンツ)、SOPHNET.(ソフネット)、PLAY COMME des GARCONS(プレイ コムデギャルソン)など、気鋭のデザイナーズブランドによる別注モデルは、人気のあまり入手困難になってしまうこともしばしば。
数量限定の別注オールスターが大きな注目を集めるのも、ベーシックな定番オールスターがこれまで築き上げてきた歴史があったからこそのものと言えるでしょう。
3 オールスターとチャックテイラーは別物?
オールスターとチャックテイラーが別の製品を指していると勘違いされてしまうこともよくあります。
実際は「オールスター = チャックテイラー」のことで、どちらも指している製品は同じ。
ただし、一部スニーカーフリークたちの間では、1976年にヒールパッチが「ALL☆STAR」に統一される以前、「Chuck Tailor」という文字がプリントされていた頃のモデルを「チャックテイラー」と呼称して区別することもあるようです。
つまり70sの希少なヴィンテージモデルをチャックテイラーと呼んでいるわけですね。
またヴィンテージモデルの復刻版「CT70」(*海外限定)のことも、チャックテイラーと呼ぶこともあります。
ただしあくまでマニアの間で区別されているというだけのお話。コンバース公式の商品紹介ページでは、チャックテイラーとオールスターは同一の製品として扱われています。
4 100年変わらない。オールスターの製造工程
スニーカーショップに訪れると、沢山のオールスターが並んでいます。
コンピューターにより徹底的に管理された最新式の工場で、効率的に大量生産を行なっているのかと思いきや、実際はその真逆。
これだけ世界的に有名になった今でも、オールスターの製造工程は100年前とほとんど変わっていません。
素材の選定からスニーカーに使用するゴム練り、プレス、ヒールラベルのプリント、ソーイング、パーツ付け、バルカナイズに至るまで、伝統的な工程を守り抜いています。
完成まで81工程を要する膨大な作業の多くが、未だに昔ながらの製法よって行われているのです。
決して効率的とは言えませんが、このクラシカルな製法こそオールスターをオールスターたらしめてきた所以と言えるでしょう。
5 コンバースオールスターの定番ラインナップ
オールスターの定番ナインナップとして知られるのが、以下の3つ。
創業当初からの定番「CANVAS ALL STAR HI」、1957年に登場したローカットの「CANVAS ALL STAR OX」、そして2017年に誕生したばかりの新顔「ALL STAR 100」です。
5-1 CANVAS ALL STAR HI(CHUCK TAYLOR)
「CANVAS ALL STAR HI」は、元祖オールスターとも言うべきハイカットタイプのオールスター。1917年に生産をスタートして以来、細かなディテールを除きデザインのほとんどが当時のまま。
もはやコンバースというブランドの枠を超え「スニーカー」の代名詞と表現しても過言ではないほど。
キャンバス地のアッパー、天然ゴムを使用したラバーソール、くるぶし保護のために付けられたお馴染みのアンクルパッチ。とりあえず一足欲しくなる、スニーカー界における定番中の定番です。
5-2 CANVAS ALL STAR OX
「CANVAS ALL STAR OX」は、元祖オールスター「CANVAS ALL STAR HI」の生産スタートから数えて40年後、1957年に登場したローカットタイプのオールスター。
短丈のオックスフォードシューズを思わせるスッキリとしたミニマルなフォルムは、どんなスタイリングにも馴染む汎用性の高さが魅力です。
定番のアンクルパッチこそ無いものの、今ではハイカットモデルと並ぶオールスターにおける2大定番モデルの1つとして世界中のスニーカーフリークたちから愛されています。
5-3 ALL STAR 100
1917年にオールスターの生産をスタートしてから100年後の2017年。その生誕100周年を記念して新たに開発されたモデルが「ALL STAR 100」です。
一見するとデザインは定番の「CANVAS ALL STAR HI」とほとんど同じ。
しかしながら、アッパー・タン・ソールに至るまで各パーツに搭載されている技術は、かつてのオールスターを圧倒するハイスペックなモデルに仕上がっています。
中でもソールには、防滑性に優れた「トラクションソール(TractionSole)」そして高性能の「リアクトインソール(REACT)」を搭載。ローテクな雰囲気はそのまま、履き心地と歩きやすさをクラスアップしたまさに次世代のオールスターです。
6 近年は、大人のための上質なオールスターも登場
「定番のオールスターは大好きだけれど、周りと被ってしまうのがちょっと嫌」
そんなこだわりの強いファッションフリークたちから近年人気を集めているのが、コンバースアディクトやアヴァントを始めとしたちょっとハイエンドなオールスターです。
6-1 CONVERSE ADDICT
「CONVERSE ADDICT(コンバース アディクト)」は、1960sのヴィンテージのオールスターを再現した特別なモデル。
コットン素材のシューレースに、星のマークが3つ付いた「スリースター」のヒールラベル、シュータン裏にプリントされたプレーヤーズネームなど、当時のディテールを忠実に再現しています。
一方、ソールにはビブラム社製のハイパフォーマンスラバーコンパウンド、そしてインソールにはEVAに加えヒール部分にもクッション製抜群の「PORPON®」といった最新技術を搭載。
60年代を思わせる独特のヴィンテージ感はそのまま、機能性を高めたオールスターを代表するハイエンドモデルです。
6-2 ALL STAR COUPE
「ALL STAR COUPE(オールスター クップ)」は、2018年に誕生したばかりのオールスターのニューモデルです。ミッドカットとオックスフォードの2種類を展開しています。
定番オールスターならではのローテクでラフな雰囲気とは対照的な、ドレッシーでスタイリッシュなデザインが特徴。
従来のキャンバス地に代わって、スエードやスムースレザーといった素材を採用。ヨーロッパテイストの上品な雰囲気は、足元をさりげなくクラスアップしてくれるはずです。
6-3 ALL STAR J
「ALL STAR J(オールスター ジェイ)」は、「J」という名の通りなMADE IN JAPANモデルのちょっと特別オールスターです。
アッパーには通常のオールスターよりも目の詰まった上質なキャンバス地を採用。
さらにヒールラベルには「ALL☆STAR」の下に「Made in Japan」の文字がさりげなくプリントされています。
ソフトな履き心地と豊かな風合い、そして物持ちの良さ。古き良きオールスターのデザインに、MADE IN JAPANのモノ作りの素晴らしさをギュッと詰め込まれています。
7 日本製オールスターとアメリカ製オールスターの違いは?
オールスターについて掘り下げていくうちに必ずぶつかるのが、日本製オールスターとアメリカ製オールスターのお話。
実は現在日本国内で流通しているオールスターは、伊藤忠商事株式会社の資本参加によって2003年に設立されたコンバース・ジャパン社の製品。これとは別にNIKEによって買収されたアメリカのコンバース社の展開するオールスターも存在します。
しかしながら、コンバースジャパン社とUSのコンバース社は全くの別会社。US製のオールスターが国内で流通すればコンバースジャパン社が損害を受けるとの理由から、訴訟の末に海外製コンバースの輸入は全面差し止めに。
現在、US製のコンバースを入手するには個人的に輸入するほかありません。
ちなみにデザインやディテール、履き心地も日本製とUS製では微妙に異なるため、スニーカーフリークの中にはわざわざアメリカから個人輸入してUS製のオールスターを着用している方もいるのだそう。
好みが分かれるところではありますが、いずれにせよオールスターが不朽の名作である点について変わりはありません。
ALL STARは、これから先の100年もずっと定番。
コンバース社の誇る名作中の名作、ALL STAR(オールスター)。
ヒールラベルやアンクルパッチを始めとしたディテールに関しては細かなマイナーチェンジを重ねてはいるものの、基本的なデザインや構造は1917年当初とほとんど変わりません。
工場技術が大幅に進歩した現在も、時間と手間のかかるクラシカルな製法で1つ1つ丁寧に製造されています。
現代人の感覚にフィットするよう、コラボレーション企画やハイエンドモデルの展開など様々な工夫を凝らしつつ、ALL STARはこれから先の100年も定番スニーカーとして愛されていくことでしょう。