繊維の着色、浸染や捺染など。衣料品の染色や加工のちょっと専門的なお話

私たちが普段から深く接している衣料品。

ですが仕上げられるまでの工程はあまり知られていません。

実は様々な工程を経て製品が作られているんです。

今回はどの様に服が染められるのか、染め方の種類や加工の種類などなど、ごく一部ではありますがちょっと専門的な内容に触れていきます。

1 繊維における着色の意義とは?

一般的に衣料品に使用される繊維製品の多くは着色されていますが、この着色作業を「染色」と呼びます。

また、繊維素材は着色だけではなく、様々な機能性を付与するために加工が施されているんです。

これを「仕上げ加工」と呼びます。

この2つの加工工程を合わせて「染色仕上げ加工」、略して「染色加工」と呼称します。

1-1 仕上げ加工の意義

通常の反物は染色後、仕上げ加工を施し、商品価値を高めてから出荷されます。仕上げ加工とは、繊維素材もつ機能や繊維素材のもつ機能や特性を充分に発揮できる状態にすることを意味します。

例えば、柔軟性の付与や、硬仕上げなどの風合い加工、光沢の付与や寸法安定化への防縮加工などがこれに相当します。

このような通常の価値を高めるための加工を「一般仕上げ加工」と言いますが、この他に新たな機能を付与するための「機能加工」があります。特殊外観の付与や、特殊機能としての快適性の付与、衛生性などの機能付与などがこれに該当します。

1-2 実践的機能と情報的機能

衣服には「実践的機能」と「情報的機能」という概念が存在します。

なかなか普段服を楽しんでいるだけでは聞き馴染みがありませんよね。

実践的機能とは使用する時に備えているべき本来の機能のこと。簡単に言えば寒暖などの外界からの刺激をガードする機能などのことなのでイメージがつきやすいですね。

もう一方の情報的機能は、美しい、楽しいなど、視覚や触覚等の感覚に訴える機能のこと。付加価値をより高める機能と考えて差し支えありません。

近年では衣料用染色加工の目的は後者に置かれることが多くなってきていますね。

2 着色剤

服の染色を考える上で、着色剤の存在を忘れてはいけません。

衣料用の繊維を着色するのは大部分が染料で、染色工業で使用されている染料はほとんど合成染料です。

ここからは着色剤の基本をおさえていきましょう。

2-1 染料と顔料

繊維の着色に使われる着色剤は、染料と顔料があります。

  • 染料(昔)…動物、植物由来の天然色素
  • 染料(今)…合成有機化合物
  • 顔料(昔)…鉱石の微粉砕
  • 顔料(今)…合成無機化合物、合成有機化合物

ざっと書くと上記のように。

染料は水や溶剤に溶けるか分散し、繊維と親和性があるもののことと定義されています。

動物や植物由来の天然色素は水に溶けるため、染料に分類されています。

対して顔料は水や溶剤に溶けず、繊維に親和性がないもののこと。

そのためバインダーと呼ばれる高粘度のポリマー(ある種の接着剤)を用い繊維に固定しているんです。

しかし最近ではナノテクノロジーを応用して顔料粒子を細かく粉砕することにより、顔料を用いながらも染色に近い効果を出すことも可能になってきています。

2-2 染料の種類

染料は対象の繊維によってそれぞれ適した「染料種族」が存在します。

おなひ種族などでも使いやすいもの、発色性の良いもの、堅牢性の良いもの、圴一染色しやすいものなど、色々な差があります。

繊維 染料 染色
綿

レーヨン
直接染料 平面構造の水溶性アニオン染料、中性塩の存在により繊維に吸収される
建染(バット)染料 アルカリと還元剤で溶剤化。染着後に酸化発色して不溶化する
硫化染料 硫化ナトリウムで還元、可溶化。染着後に酸化して不溶化する
ナフトール染料 下漬剤で前処理を行い、繊維内で顕色剤と発色、固着
反応染料 反応基を有する水溶性アニオン染料で繊維と共有結合反応する
羊毛
綿
ナイロン
酸性染料 水溶性のアニオン基を有する染料で繊維のカチオン基とイオン結合する。

堅牢性により一般的、レベリング型、ミリング型に分類される

賛成媒染染料 酸性染料と同属で、染色の後クロムイオンと配位結合させ発色する
金属錯塩染料 染料構造にクロムなどの金属原子を有したアニオン系酸性染料
反応染料 羊毛用の反応性染料、種類が少なく使用が限られる
ポリエステル/アセテート 分散染料 色素母体は水に不溶。分散剤で分散させ、高温で繊維内に拡散着させる。

堅牢性、染色性によりE型、SE型、FS型と分類される

アクリル/
CD-PES(カチオン染料可染型ポリエステル)
カチオン染料 カチオン基を有する水溶性染料で、繊維内のアニオン性基とイオン結合する

3 衣料品の着色方法である浸染と捺染

染料と補助薬剤(助剤)を誘拐した染色浴槽(染浴)の中へ糸や布をつけて、攪拌しながら圴一に着色する方法を「浸染」。

一方で布に模様をつける着色方法を「捺染」と言います。

布に模様を作る方法では色材を使って手書きする方法がもっとも手軽ですが、大量加工を行う婆にはスタンプ方式やスクリーン方式が採用されます。

浸染と捺染を合わせて「染色」と言いますが、浸染のことを染色と指すこともあるので、状況状況で確認する必要がありますね。

4 染色前の準備工程

染色前の繊維には様々な不純物や付着物が含まれています。これらは染色時に、くすみや、不圴染、再現性不良などの原因になってしまうことも。

特に天然繊維には不純物が多く含まれています。これを取り除き、圴一に染色できるようにする前作業を準備工程といい、様々なプロセスがあります。

4-1 毛焼き

織布、編布には毛羽が出ていることが多く、特に綿などの紡績布に多く発生します。

これを取り除くため、ガスバーナーや電熱器で焼き切ります。

4-2 糊抜き

布を織る際に織りやすくするための糊材を付着させます。この糊材を取り除くことを糊抜きと言います。

糊が残っていると染色が妨害されてしまうため、酸素や酸化剤を使用して対処します。

4-3 精錬

繊維中に残存する各種不純物、工程上の油剤を、界面活性剤とアルカリで処理して除去します。

4-4 漂白

繊維中に残存する色素分を分解除去。繊維を無職の状態にする工程のこと。漂白には亜塩素酸ソーダ、過酸化水素などの酸化系漂白剤や、ハイドロサルファイトなどの還元系の漂白剤が使用されます。

羊毛など、損傷を受けやすい繊維には還元系の漂白剤を使用します。

5 綿、セルロース系繊維の準備工程

一般的に、綿やセルロース系の繊維には前述の工程に続き、必要に応じてシルケット加工が施されます。

これは綿・セルロース系布の両端を引っ張りながら高濃度の苛性ソーダ溶液中に通す加工。

繊維が膨潤し、染料の吸収力が向上します。さらにシルクのような光沢が出て、強度の向上や形態安定の向上も見込めます。

この工程は一般的に布の状態で行われますが、糸の状態や染色後に行われる場合もあります。

6 合成繊維の準備工程

6-1 リラックス処理

繊維の延伸、緊張を緩和させ、膨らみを与えます。

熱水の中で無張力状態にし、振動を与え、文字通り繊維をリラックスさせます。

6-2 アルカリ減量加工

高濃度の苛性ソーダ溶液中でポリエステル繊維織物を処理し、繊維表面を加水分解、溶解、減量させます。

これによりシルクのような風合いが得られます。

6-3 ヒートセット処理

繊維織物の均一性、染色の安定性(均一性、再現性)をますため、160〜200℃の高温、張力状態で熱の中を通します。

これにより織物が安定し、染色時のトラブルを減少することができます。

7 羊毛繊維の準備工程

羊毛繊維は繊維表面が鱗片(スケール)で覆われているため、他の繊維とは処理法が若干異なります。羊毛生地の準備処理工程では、熱、圧力、蒸気を加えて、羊毛独特の風合いを出します。

目的に応じて処理の仕方が大きく異なるのも羊毛繊維の特徴です。

 

  1. 洗絨(せんじゅう)…織物を洗剤で洗い、風合いをよくする
  2. 煮絨(しゃじゅう)…織物をローラーに巻きつけて熱水で処理する
  3. 縮絨(しゅくじゅう)…織物を湿らせ、もみ叩きでフェルトにする
  4. 蒸絨(じょうじゅう)…多孔シリンダーに織物を巻きつけ、蒸気を噴出したあと、急冷する
  5. 圧絨(あつじゅう)…織物に圧力をかけて平らにする

 

など、各種処理方法のあと、羊毛布は大きく分けて2つのタイプに仕上げられます。

7-1 クリアカット仕上げ

羊織物の表面毛羽を焼き取ります。

またはカットして織物組織の表面をはっきりと出します。

7-2  ミルド仕上げ

表裏共に細かな毛羽を残す仕上げの方法です。

表面がふっくらと柔軟に、温かみのある風合いになります。

8 浸染について

浸染工場は一般的に入庫された未処理の繊維、いわゆる生機(きばた)と各種染料、薬剤に多量の水とエネルギーを使って染めていきます。

未固着の染料や未利用の薬剤は、染色排水として排出。

綿繊維、羊毛繊維、合成繊維の大部分はバッチシステム(回文式処理)による吸尽染色が行われています。

8-1 糸染め用染色機

8-1-1 パッケージ染色機

綿状、綛(かせ)状の繊維を染色タンクないのかごに圧縮し、隙間なく詰め込みます。

染液をポンプで循環させ、染色します。

8-1-2 チーズ染色機

コーン状、チーズ状に巻き上げた糸を染色タンクないのスピンドルに積み重ね、染液をポンプ内部で循環させ、染色します。

8-1-3 綛糸染色機

噴射式染色機と回転バック式染色機の2種類があります。

共に綛状の糸をアームにかけ、染液を循環して染色します。噴射式はアームから染液を噴射し、回転バック式は染液全体をポンプで移動させます。

8-2 糸染め用染色機

8-2-1 ウインス染色機

ロープ状にした布の反始と反末をつなぎ、リールの回転で布を引き上げ、移動、回転し染色する機会です。

染液は染色容器の底に溜まっていますが、布の移動で均一化されます。

8-2-2 ジッガー染色機

左右の2本のローラーに布を拡布状態で巻きつけ、ローラーの間で往復させます。

8-2-3 ビーム型染色機

多孔のビーム管に布を圴一に巻き込み、ポンプで染液を布の間に通して染色します。糸チーズ染色機と原理は同じ。

8-2-4 液流型染色機

ロープ状に繋いだ布に、染液をジェット状に吹き付け、液の流れにそって布も循環させ染色します。

8-3 製品染め様染色機

糸から染める糸染めに対し、縫製後の衣服をまるっと染色するのが製品染め。

未染色のものを準備しておき、需要状況に応じて染色すれば多色の在庫を持たなくても良いといったメリットも。

染色機はパドル染色機やドラム染色機が使用されます。簡単なので、実は家庭用の洗濯機でも同じことができてしまいます。

8-4 連続染色

大量加工の場合は連続式で染色されることもあります。代表的な染色例は下記の3つ。

8-4-1 コールド・パッド・バッチ法

別名パッド・ロール法。

南濃占領にアルカリを添加した染色浴槽に、繊維をパッド、絞り、巻き上げます。

温室で一夜間保管(バッチング)。加熱なしで染色が可能な簡便な方法です。

8-4-2 パッド・サーモフィックス法

アルカリを含んだ染料液に繊維をパッド。

中間乾燥し、高温で処理することにより染色します。

この方法は、綿を反応染料で染色する場合に用いられます。ポリエステルや綿混紡品の染色ではサーモゾル染色とも呼ばれます。

8-4-3 パッド・スチーム法

染料液に繊維をパッドし、乾燥させます。

その後アルカリ液をパッド、直ちにスチームボックスを通過させ、染料を固着。

綿やセルロース繊維をバット染料や反応染料で染色する場合に使用されます。

9 捺染について

繊維などに模様を描く方法として捺染が挙げられます。

染料とアルカリまたは酸、薬剤を混入した色糊を作成後、生地に模様を描き、熱や上記で処理して染料を繊維へ固着させます。

9-1 直接捺染法

9-1-1 ハンドスクリーン捺染

捺染台へ拡布状に貼った白布に、プリント用スクリーンの上においた色糊を人出でスキージング(ヘラで色糊を印捺)します。

昔の謄写版印刷と同じ要領で、手芸品の型紙捺染もこの形で行います。

9-1-2 オートスクリーン捺染

別名フラットスクリーン捺染。

エンドレスベルト上に張った生地に、スクリーン型枠を置き、スキージング。

印捺速度が遅いので、最近はロータリースクリーン捺染が多く採用されています。

9-1-3 ロータリースクリーン捺染

円筒形のロータリースクリーンで50〜100m/分の高速で自動的に印捺します。

スクリーンの網目がやや洗いため、柄の尖鋭性はオートスクリーンよりやや劣ります。

9-1-4 ローラー捺染

凹版銅製ロールの凹部に色糊をつけ、100m/分程度の高速で印捺。

コストが高く、熟練を要するので、オートスクリーンやロータリースクリーンに移行しています。

9-1-5 転写捺染

昇華しやすい分散染料を使用したインクで、紙に模様を印刷。

その模様を高温で昇華させて生地へ転写します。

ポリエステル、アセテートに適用され、洗浄工程も不要で便利なのですが、熱で変色しやすいという欠点も。転写紙の印刷ロットが大きいのも難点になることも。

9-1-6 インクジェット捺染

通常のパソコン用プリンターと同じ要領です。

様々な用途に対応でき、メリットも多いのですが、プリント速度が遅く生産性が悪い、装置代やインク代が高いなどのデメリットも。

そのため現状では特殊用途に使用されることが多い手法でもあります。

10 仕上げ加工

仕上げの加工は実に多くの種類が存在します。

一部ではありますが、下記の様な加工が代表的です。

加工の種類 目的、用途、方法など
防しわ加工 綿、麻、レーヨンなどに行う防しわ、防縮性を付与する樹脂加工。現在は低ホルマリン、非ホルマリン加工が行われている。
防縮加工 サンフォライズ加工(綿に行う物理的加工法)・羊毛の防縮加工など。
マーセライズ加工 シルケット加工など、絹の様な光沢を得るため、20〜26%の水酸化ナトリウム溶液に浸し、緊張させて水洗感想する加工。
硬化加工 綿布などに樹脂を付与したり、パーチメント化して麻の様な硬い感触を与えたもの。
柔軟加工 機械で物理的に行う方法と、界面活性剤、合成樹脂エマルション、撥水性柔軟剤、、シリコン樹脂、高級アルコール乳化油などで加工する方法も。
フロック加工 布地に合成樹脂などの接着剤をプリントし、繊維の微笑粉状のものを吹き付け密着させたもの。

ビロードの様な外観に。

コーティング加工 ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミノさんなどを布地に塗布し、皮革の様な風合いと光沢が得られる。
金属蒸着加工 アルミニウムなどの金属を真空中で加熱蒸発させ、布の表面に密着させたもの。加工面は熱線などの反射効果がある。
起毛加工 布地の表面を物理的方法で毛羽立て、保温性を高めて風合いをだす。

片面起毛と両面起毛がある。

プリーツ加工 折り目をつけて加工。合成繊維は熱可塑性を利用して加工。羊毛を化学薬品を用いてシロセット加工に。
ストーンウォッシュ 洗剤と一緒に砕石を混ぜて洗濯し、わざとムラを出したもの。

最近は石を使わず薬品を添加して洗うことで同様の効果を得られえる。

ウォッシュ・アンド・ウェア加工 洗濯後すぐ着用できる様にした樹脂加工。
パーマネントブレス加工 セルロース系織物に特殊樹脂加工を施し形状安定のために加熱処理をする加工。
防水加工 布面を合成ゴムやビニル系樹脂などでコーティングし、水を通さない様にする。不通気性加工。
撥水加工 水を弾く様にする加工。通気性がある。
防汚加工 合成繊維に吸水性を与え、よごれをつきにくくする加工。
はつ油加工 フッ素化合物で処理する加工。水中では再汚染性が高い。
帯電帽子加工 染色の最終段階で帯電帽子剤をつけて、熱固定する方法。
防炎/難燃加工 消防法にて特定の繊維製品の防炎性、難燃性が義務付けられている。

合成繊維は紡糸時にリン、ハロゲン化合物を練り込む方法もある。

防融加工 耐溶融性の皮膜を形成する加工。
吸湿速乾加工 合成繊維に親水性物質をブレンド、加工。帯電帽子性にも優れる。
防虫加工 主に羊毛繊維などに殺虫剤または防虫剤を付着、吸着させる。
抗菌防臭加工 微生物の繁殖を防ぎ、着臭をガード。
UVカット加工 紫外線吸着剤をコーティングしたものと、特殊な微粒子を練りこんだものがある。

加工方法に関する詳しい知識は以下の記事でもご紹介しています。興味のある方は併せてご覧になってくださいね。

まとめ

今回は服の加工、染め方に関してご紹介してきました。

私たちが普段から着用している衣服も実はかなり専門的な技術がたくさん使用されています。

衣料品や素材を見るときに思い出してみると、商品にまた別の価値観を感じるかもしれませんね。