化学繊維を徹底解説。知っておきたい歴史や紡糸、代表的な素材など

レーヨンやナイロン、ポリエステルなどなど、服を買うときや洗濯するときなど目にする機会も多いですよね。

これらの素材は「化学繊維」と呼ばれているんです。

化学繊維というとなかなか聞き馴染みがない方も多いのではないでしょうか?

今回はアパレルはもちろん、繊維を深く知る上で欠かせない「化学繊維」の変遷や歴史、紡糸方法や代表的な素材などなど、ちょっとディープな内容をご紹介していきます。

1 化学繊維とは?

かつては綿や麻、絹や羊毛などの天然素材が衣料を支えていました。

これをもっと安価に、環境にも配慮し、手軽に衣服などに活用するために考案されたのが化学繊維です。

当初は天然繊維の模倣を目標にしていましたが、技術の進歩により品質の向上や昨日の付加が可能になってきました。

今では日々の生活になくてはならない繊維として活躍しています。

2 化学繊維の歴史

2-1 セルロースの発見

人類において天然繊維、中でも絹は効果な繊維。この絹に変わる繊維を作り出すことは長い間人類の夢でもありました。

化学が発達してきた19世紀、絹の主成分と木材主成分が同じセルロースであることが分かり、木材と溶かして人口の繊維を作る試みが始まります。

1883年、イギリスのスワンは、硝酸を使用して硝酸セルロースから繊維を作り出すことに成功し、ロンドンの博覧会に出品しました。この繊維は「Artificial Silk(人造絹糸)」と命名されました。その後の1925年に、アメリカでレーヨンと呼ばれるようになるのは実はこの繊維のこと。

1883年の翌年、フランスのシャルドンネは硝酸セルロースを改良して繊維化に成功。1889年のパリ万博にはこの繊維から作った織物を出品しました。絹のような光沢があり洗濯が可能なこの新しい繊維はパリ万博でグランプリを獲得しています。

この硝酸セルロース繊維は人類が最初に工業化した人造繊維と認められ、シャルドンネは人造繊維第一号の開発者としての栄誉を与えられています。

2-2 工業化の開始

シャルドンネはこの繊維の工業化をスタートさせますが、硝酸セルロースは引火性が高く、工場の火事や爆発などの事故、着用者のやけどなども発生し、なかなか発展しませんでした。

その後、これらの欠点を改良した銅アンモニア法によるキュプラや、ビスコース法によるレーヨンが開発され、さらに近年には直接熔解法によるリヨセルも登場しました。

20世紀に入るとアメリカのカローザス(デュポン社)は合成ゴムを開発し、ポリエステルの研究に入りました。

研究は行き詰まりながらもポリアミドに転向した後、ついにナイロンを開発。

これが合成繊維第一号となり、カローザスに栄誉が与えられました。

これにより合成繊維時代が始まり、アクリルやポリエステル、ポリウレタンなどの合成繊維が相次いで開発され、多様な衣料を楽しめる時代に入っていきます。

3 化学繊維の要、高分子(ポリマー)から繊維へ

天然繊維を化学繊維で代用するためには当然ながら化学的なアプローチが必要でした。

そこで着目されたのが高分子(ポリマー)の存在。

天然繊維はセルロースやタンパク質などの分子が鎖状に長く連なった大きな分子、すなわち高分子からなっています。

天然繊維はその生成過程で、これらの鎖状の高分子が繊維軸方向に並んだ配列になり、分子自体に引っ張る力が作用することで、強度を生み出します。

人工的に繊維を作る試みは、まずは天然の高分子を利用することからスタートしました。

研究の末、鎖状の高分子を科学的に合成することが可能となり、様々な化学繊維が誕生していきます。

4 繊維にする代表的な3つの方法(紡糸方法)

高分子を繊維にするためには何通りかの方法があります。

液体状にした高分子を、多数の細かい孔のあいた板(口金)から押し出し、細く、長く連なった状態にします。

これを固めて繊維とすることを「紡糸」と呼びます。

液体状にする方法としては、溶媒に溶かすものと、加熱して溶かすものがあります。

300℃程度以下の、高分子が分解温度より低い温度で溶けるものは加熱することが一般的です。

4-1 湿式紡糸

溶媒に溶かした高分子を、凝固浴(高分子を溶かさない液体)中に押し出して固める紡糸法のことです。

4-2 乾式紡糸

溶媒に溶かした高分子を、溶媒を蒸発させて固める紡糸方法です。

揮発しやすい溶媒の使用が必要になります。

繊維は加熱された筒の中で溶媒が蒸発することによって固められ、巻き取られます。

4-3 溶融紡糸

高分子をそのまま溶媒を使わずに加熱溶融し、繊維として押し出し、冷却固化させるものです。

前述の2つの方法と比較し、もっとも高速で紡糸できます。

ポリエステルやナイロンなど、多くの繊維が溶融紡糸で作られています。

5 再生繊維

再生繊維は、天然に存在するセルロースを原料とし、熔解後にノズルから押し出して繊維状に凝固、それを紡糸したものです。

熔解法の違いから、レーヨン、キュプラ、リヨセル(テンセル)があります。

5-1 レーヨン

レーヨンは1892年にイギリスのクロス、ベバン、ビードルによっては発明され、1900年以降にヨーロッパ各国で工業化された繊維。

日本では1916年に生産が開始されていますが、国内でしようした技術には国産技術と海外からの導入技術の両方があることは、実はあまり知られていません。

1937年には世界一のレーヨンの生産国、輸出国となった日本では多くのレーヨン会社が設立されました。

第二次世界大戦から戦後にかけて生産されたレーヨン製品は、湿潤時の強度低下と収縮が激しく品質が高いものではありませんでした。その後改良を重ね1955年〜1970年ごろに最盛期を迎えます。

レーヨン長繊維は絹とほぼ同じ用途でしたが、合成繊維との競合や環境問題もあり、現在は短繊維がメインとなり生産されています。

衣料品全般やカーテンなどのインテリア用品など幅広く活用されています。

5-2 キュプラ

1857年、ドイツのシュバイツァーが銅アンモニア溶液にセルロースが溶けることを発見、1890懇ろに銅アンモニア法によるキュプラ繊維が工業化されました。

製造コストが高く、ビスコース法に代用されていましたが、アンモニア合成法の進歩によって再度製造されるようになりました。

キュプラの主成分は綿の種子から採れるコットンリンター。主成分はこちらもセルロースです。

このコットンリンターを精製し、銅アンモニア水溶液で溶解、これを水中に紡糸してセルロース繊維に再生させることを「銅アンモニア法」と呼びます。そのためキュプラは銅アンモニア繊維とも呼ばれるんです。

ゆっくりと凝固するためにほぼ円形でレーヨンよりも細い繊維に。されに絹に似た光沢があり肌触りがよく、吸湿性もしっかり。

旭化成が「ベンベルグ」の商標名で生産していることでも知られています。

主に裏地や薄手の婦人服表地、ブラウス、ランジェリー、スカーフなどに使用されています。

5-3 リヨセル

家庭用品品質表示法では指定外繊維とされていましたが、2017年4月より改正により再生繊維として表示されるようになったリヨセル。

1978年オランダで基礎技術が開発され、ライセンス供与されたイギリスとオーストラリアで1980年から生産が開始された繊維です。

日本では1992年、短繊維を輸入して製品の研究がスタートし、1994年ごろから普及し始めたため、比較的新しい繊維と言えます。

リヨセルの原料は木材パルプなため、こちらももちろん主成分はセルロース。

レーヨンは木材パルプを化学的に変性させて原液とし、元のセルロースに再生することで繊維としますが、リヨセルは有機溶剤(アミンオキサイドなど)でパルプを直接溶解してセルロースの状態のまま原液とし、紡糸します。

レーヨン製造時のような化学的な変性はないため、セルロース分子の切断が少なく重合度もレーヨンより大きいのが特徴。

原料のパルプも計画的に植林されたユーカリを使用しており、環境保護にも配慮した繊維と言えます。

セルロースの性質を持っているために吸湿性があり、湿潤時の強度低下も少なく、光沢やしなやかな風合いがある点が特徴。

しかし濡れると効果し、擦れると羽毛立ちして白っぽくなってしまいます。

綿製品と同様に使用されたり、面やポリエステルとの混紡が多いのも特徴。

また、よく混同されるリヨセルとテンセルですが、テンセルはオーストラリアのレンチング社がもつ商標名です。

6 半合成繊維

半合成繊維は天然のセルロースを原料として用い、その一部に化学物質を結合させて作る繊維のこと。

そのため、原料になったセルロースの性質と化学的に合成された部分の両方の性質をもつ、ハーフのような繊維です。

6-1 アセテート

レーヨンの主成分であるセルロースに酢酸を化学的に結合させると酢酸セルロースになります。この酢酸セルロースは第一次世界大戦の際に飛行機の翼の塗料として開発されたものです。

これをアセトンに溶解して原液とし、紡糸して繊維化させたものがアセテートです。

アメリカを中心に発達しました。日本で本格的に生産されるようになったのは第二次世界大戦後と言われています。

伸びやすい上に軽くしなやかで、絹のような光沢感があるのが特徴。摩擦に弱くシワになりやすいというデメリットも。

強度があまり強くないため、ポリエルテルなどの合成繊維の長繊維と加工されます。

婦人服表地、裏地、ブラウス、スカーフ、和装品などに活用されます。トリアセテートは黒の発色が良いため、礼服に使用されることが多いのも特徴。

ちなみにアセテートにはトリアセテートとジアセテートの2種類があります。付加するアセチル基の数で呼び名が異なり、2つ付いたものがジアセテート、3つが付いたものがトリアセテートです。

7 合成繊維

再生繊維や半合成繊維は天然の高分子物質を原料として作られています。

対して合成繊維は原料となる単量体を多数重合させ、鎖状高分子を合成。それを紡糸して作られます。ちょっと難しい作り方ですね。

合成繊維のキーマンであるカローザスは、32才の若さでハーバード大学からアメリカのデュポン社の基礎研究所に招かれ、合成ゴムを発明。

その後、ポリエステルの研究に入りますが、合成した繊維の融点が低く一旦断念。1935年にナイロンを発明しました。

その後、各国でビニロン、アクリル、ポリエステル、ポリウレタンなど多くの合成繊維が開発されました。

ちなみにビニロンは日本で発明、工業化された合成繊維です。

合成繊維にはたくさんの種類がありますが、衣料に適したものは限られ、ナイロン、アクリル、ポリエステルの3種類が大部分を占めています。

これらは三代合成繊維と言われ、石油を原料として化学合成された高分子から作られています。

7-1 ナイロン

カローザスによって発明されてナイロンは1938年にデュポン社によって工業化され、同年開催の世界博覧会で発表されました。

この世界初のナイロンは「ナイロン66」として知られています。

この時のコピーである、「石炭と水と空気から作られ、蜘蛛の糸よりも細く絹よりも美しく、鋼鉄より強い繊維」は有名。

現在では石炭ではなく石油を主原料として作っています。

軽くて強く、柔らかい素材感でありながら、高い伸縮性、シワになりにくさも兼ね備えているナイロン。

ナイロンは絹で作られていた婦人用ストッキングに使用されていましたが、その後は衣料品全般に広く活用されています。

7-2 アクリル

アクリルの主成分であるアクリロニトリルは実は古くから知られていましたが、溶剤に溶けにくく、繊維化が困難でした。

そんな中1931年、ドイツのIG社はこの課題を解決し紡糸に成功。1950年にはデュポン社が生産を開始し、西ドイツでも工業生産がスタートしました。

日本では1953年ごろから参入しています。

アクリル生産が伸びた大きな理由は、アクリルの熱収縮を利用したハイバルキーヤーンの開発があり、これは主にセータなどのニットに使用されています。

アクリルは軽くて伸びも良く、シワになりにくい特性があります。

また、短繊維に加工すると柔らかくて保温性が良く、羊毛に似た感触になります。

ピリング(毛玉)が生じやすい点はデメリットとして考えていいでしょう。

7-3 ポリエステル

前述のようにカローザスは一旦ポリエステルの研究を断念しています。

それを引き継いだのが、なんとイギリスのCPAという印刷会社。JR・ウィンフィールドらが研究に乗りだします。

彼らはポリエステル繊維を合成する化学物質を様々研究し、ついに課題をクリアしたポリエステル繊維の発明に成功し、1941年に特許を申請しました。

化学会社であるイギリスのICIとCPAは技術連携を行い、1953年にポリエステルの工業生産をスタート。同年、カローザスの在籍したデュポン社もCPAの技術を用いて生産を開始。

日本は特許料が高価なことから、帝人と東レが共同でICIから製造技術を導入、1958年にテトロンの名称で生産を行います。

このように日本のポリエステル生産技術は、全て欧米からの技術を導入して実現されているんです。

短繊維は綿、レーヨン、羊毛などとの混紡により紡績され、長繊維は多様な加工ができるために衣料品やインテリア、産業用など幅広く活用されています。

7-4 ポリウレタン

1958年にデュポン社が「ライラク」の名称で発表した繊維で、ゴムに似た弾性をもつ合成繊維です。

ゴムよりも伸縮性、耐久性に優れており、軽くて細い糸の製造が可能。

スパンデックス(弾性繊維)とも言われることも。

全て長繊維で、他の組成の糸を被覆させたり、紡績工程で他の短繊維に包み込まれて衣料に用いると糸になります。これらの糸は伸縮性を活かしてストレッチ素材として用いられています。

そのためカジュアルウェアなどの伸縮性が必要とされる分野で主に活用されています。

7-5 ビニロン

ビニロンは日本の研究と技術で工業化された最初の合成繊維のこと。

1939年、京都大学の桜田一郎らが、水溶性のポリビニルアルコールを原料として、繊維化した後に水に不溶性になる技術を発表。その後の1950年にクラレが工業化し生産をはじめました。

合成繊維の中では吸湿性が強く、当初は学生服や作業服などの実用衣料へ使用されていました。

現在では衣料用分野はポリエステル短繊維に変わって資材用として使用されています。

まとめ

今回は化学繊維の歴史や素材、紡糸などちょっと専門的な話に触れてきました。

アパレルの素材、繊維は化学の力に支えられながら発展してきたと言っても過言ではありません。

歴史的な背景を踏まえた上でいつも触れている繊維を見返すと、色々な気づきがあって面白いかもしれませんね。

繊維を深く知る上でのきっかけになれば幸いです。