皆さんは「カシミヤ」というキーワードを耳にした時、どのような印象を持ちますか?
おそらく多くの方が、「上質なセーターやニットウェアなんかに使われる気がする」とか「とにかく高級そう…」というイメージを持たれるはずです。
しかしながらカシミヤという素材がなぜ高級なのか、他の素材と一体何が違うのか、その明確な理由について説明できる方は意外と少ないのではないでしょうか?
メジャーな素材であるほど、今更他人には訊けないものですよね。
今回はそんな疑問を晴らすべく、カシミヤという素材の特別感の理由を徹底分析しました。
1 そもそもカシミヤって何?
カシミヤとは、中国、モンゴル、ネパール、イランを始めとした高台に生息している「カシミアヤギ」から採れる高級品種の毛繊維のことです。
このカシミヤヤギ一頭あたりから採れる毛の量はわずか150〜250g!これは一般的な羊から採れる毛量のわずか5分の1。なのでセーターを1着作るためには、なんとカシミアヤギ4頭分の毛が必要になります。
しかも他の品種に比べてカシミヤヤギは頭数自体も非常に少ないため、その毛は必然的に高値で取引されているのです。
ちなみにウールは羊(ひつじ)から採れますが、カシミヤは山羊(ヤギ)から採れる毛ですので混同しないようにしましょう。
2 カシミヤという素材の持つ3つの特徴
カシミヤが高値で取引されるのは、カシミヤヤギの頭数が少なく希少だからという理由だけではありません。
カシミヤには、他の毛繊維とは一線を画する3つの特徴があります。
2-1 上品な光沢と極上の肌さわり
カシミヤの一番の魅力といえば、やはりその極上の肌さわりです。通常、毛繊維の多くは肌に当たるとチクチクとした感覚を覚える方が多いと言われています。
一方でカシミヤを使用した製品は、思わず頬ずりしたくなるほど優しく滑らかな質感に。
これは毛繊維1本1本が非常に細くそして軽いカシミヤだからこそ実現できる肌さわりと言えるでしょう。
加えてカシミヤは毛繊維であるにも関わらず、まるでシルクのような光沢を放つという点も大きな特徴の1つです。ニットウェアやスカーフの素材として使用することで、他の毛繊維にはない上品さを醸し出してくれます。
2-2 ウールを凌ぐ抜群の保温力
カシミヤの魅力は肌さわりだけではありません。
保温性、保湿性もまたカシミヤという素材のもつ大きな魅力の1つです。
カシミヤヤギは、中国、モンゴル、ネパールのヒマラヤ、イランを始めとした寒さの厳しい環境下で暮らしています。そのためその毛は、厳しい寒さを凌げるくらい保湿性や保温性に優れているのです。
もちろん羊毛を始めとした素材も高い保温性・保湿性を有していますが、どちらが優れているかと言われればカシミヤの方に軍配が上がります。
2-3 型崩れしにくい
カシミヤは、毛繊維自体にかなり弾力性があるため型崩れしにくいというメリットもあります。
上質で繊細なイメージが強いですが、意外と耐久性にも優れているのです。ただし後ほど説明するように、カシミヤの中にも品質に応じたグレードというものが存在します。
この同じカシミヤであっても繊維に含まれている割合が低かったり、低品質の製品の場合は、すぐに毛羽立ってしまったり型崩れもしやすくなる可能性もあるため注意が必要です。
またあまりにヘビーユースする方の場合、たとえ良質なカシミヤであっても型崩れを引き起こしてしまうこともあります。
3 全てのカシミヤが最高級という訳ではない
よく誤解されがちなのですが、カシミやであれば全て最高級かと言われると必ずしもそうではありません。
3-1 カシミヤには品質に応じた「グレード」がある
実はカシミヤにも、その品質に応じたグレード(等級)というものが存在します。
グレードは、繊維自体の長さ、繊維の直径、異物混入率の3つの基準に照らして判断します。
少し難しく聞こえるかもしれませんが、要するに、繊維が細く、繊維が長く、そして不純物が少ないほど高品質であると考えられているわけです。
カシミヤのグレード(等級)一覧表
等級 | 繊維の長さ | 繊維の直径 | 異物混入率 |
---|---|---|---|
1等級 | 14μ(ミクロン)前後 | 34mm~38mm | 0.1% |
2等級 | 14~15μ | 30mm~34mm | 0.2% |
3等級 | 16μ前後 | 28mm~32mm | 0.3%以下 |
4等級 | 16μ以下 | 30mm以下 | 0.5% |
… | … | … | … |
8~9等級 | 17~18μ | 24mm以下 | 1.0%以上 |
1等級が最高品質で、数字が大きくなればなるほど品質が下がっていきます。
なので、たとえ「カシミヤ入り」という表記があったとしても、あまりに値段が安い場合にはグレードを疑った方が良いでしょう。
ただし、このグレードは残念ながら品質表示タグなどには記載されていません。そのため実際に手で触れてその品質を確かめる他に方法はないのです…。
3-2 「色」も品質に影響する
カシミヤには色によって区別されおり、主にホワイトカシミヤ、ブラウンカシミヤ、グレーカシミヤの3種類が存在します。
中でもホワイトカシミヤは脱色の必要がなく、繊維に対して余計なストレスを加えることもないため、カシミヤの中でも特に高値で取引されているようです。
もちろんブラウンやグレーが低品質というわけではありません。なぜなら、カシミヤには”色ごと”に先ほどご紹介した「グレード(等級)」が設定されているからです。
ブラウンやグレーであっても等級が高くなるほど、肌さわりも良く高値で取引されるようになります。
3-3 産地によっても品質は変わる
カシミヤは産地によっても品質が多少変わります。
これは気温の変化が大きく真冬の寒さが厳しい環境下で育ったカシミヤヤギほど、繊維が長く、そして細い良質な毛質になると考えられているからです。
中でもモンゴルのアルザス地方で育ったカシミヤヤギから取れる繊維は最高級品として扱われています。その質の高さから「カシミヤの女王」と呼ばれることもあるのだとか。
このようにカシミヤの品質を決定づける要素は、色、産地、グレードなどなど意外とたくさんあることがお分りいただけたかと思います。
4 繊細な素材であるためお手入れには注意が必要
肌さわり・保湿性・保温性など優れた性質をもつカシミヤ。
しかしながらその分、他の毛繊維と比べて手入れの手間がかかってしまうのも事実です。
例えばカシミヤは水に弱いため、普通に洗濯すると繊維表面の油脂が流れ落ちしてしまう可能性もあります。洗濯の際には必ず洗浄力の弱い「おしゃれ着用洗剤」を使い、手で優しく押し洗いしてあげたほうが良いでしょう。
また毎日ガシガシ着込んでしまう方も要注意。連続で着用することのないようローテーションしてあげることで、物持ちがかなり良くなります。
とても繊細な素材ですが、丁寧に扱うことでかなり長く着用できるようになるはずです。
まとめ
本日は、繊維の宝石として知られるカシミヤについてご紹介しました。
カシミヤは、一部の地域にのみ生息するカシミア山羊からしか採れないとても希少な毛繊維なのです。
極上の肌さわりはもちろん保湿性や保温性にも優れた上質なカシミヤなら、たとえ薄手のニットであっても十分な防寒性能を有しています。
冬場はアウターの下にサラっとカシミヤニットを着用して、コーディネート全体をクラスアップさせても良いかもしれませんね!
今年の秋冬はちょっとだけ背伸びして、上質なカシミヤのアイテムを購入してみてはいかがでしょうか?